ブロック・ケベコワ

ブロック・ケベコワ（フランス語: Bloc Québécois、略称: BQ）は、カナダの連邦レベルで活動する政党です。その名の通り、ケベック州に基盤を持ち、同州の権益をカナダ連邦議会下院（庶民院）において代表することを主な活動目的としています。党の活動は、ケベック州の主権獲得やカナダからの独立を目指すケベック独立運動を重要な背景としています。日本語では「ケベック連合」と訳されることもあります。

歴史

ブロック・ケベコワは1991年に創設されました。党の誕生には、1990年に憲法改正を巡るミーチレイク協定が破綻したことが深く関わっています。この協定の失敗を受け、当時のカナダ進歩保守党政権の閣僚であったルシアン・ブシャールを含む進歩保守党議員5名とカナダ自由党議員2名が、ケベックの民族主義を掲げて離党し、院内会派を結成したことが始まりです。この会派が後に政党へと発展しました。創設者であるルシアン・ブシャールが初代党首を務めました。

初めて参加した1993年の連邦議会選挙では、54議席を獲得し、全国的に見ても自由党に次ぐ第2党、すなわち最大野党の地位に躍り出ました。1995年には、ケベック州議会の与党であるケベック党が提案したケベック独立に関する住民投票において、独立賛成の立場を強く訴えましたが、結果は僅差で独立否決となりました。

その後もブロック・ケベコワはケベック州内で強い支持を維持し、特に少数派内閣の時期には、他の政党と連携して政権運営に影響力を行使するなど、カナダ政界においてキャスティングボートを握ることもありました。2005年には保守党や新民主党と協力し、自由党政権に対する不信任案を可決させた事例などが挙げられます。

しかし、2011年5月に行われた連邦議会選挙では、新民主党の躍進の影で、ブロック・ケベコワは歴史的な大敗を喫しました。それまでの49議席からわずか4議席へと激減し、連邦議会における公式政党としての資格を失う事態となりました。当時の党首であるジル・ジュセップはこの結果を受けて辞任しました。

党勢の低迷が続きましたが、2019年にイブ・フランソワ・ブランシェットが党首に就任すると、党は勢いを取り戻します。同年の総選挙では32議席を獲得し、自由党、保守党に次ぐ全国で第3党の地位を回復しました。

政治的立場と政策

ブロック・ケベコワの政治的立場は、一般的に左翼・社会民主主義と評されることが多いですが、ケベック民族主義という大きな傘の下に、多様な政治思想の支持者を取り込んでいる包括政党としての側面も持っています。創設者のルシアン・ブシャールが進歩保守党出身であり、また2代目党首のミチェル・ゴーティエが後に保守党に所属するなど、右派寄りの人物も党に関わってきました。そのため、支持基盤も都市部の左派的な労働者層から、農村部の保守的な層まで幅広いのが特徴です。

ブロック・ケベコワは連邦議会のみで活動しており、ケベック州議会に参加しているケベック党とは協力関係にあります。

主な政策としては、ケベック独立運動の推進が第一に挙げられます。その他にも、環境保護（京都議定書の支持など）、妊娠中絶の権利擁護、LGBTの権利承認や同性婚の合法化、安楽死の合法化といった社会的にリベラルな政策を掲げています。また、カナダの制度改革にも言及しており、連邦議会上院にあたる元老院の廃止や君主制の廃止などを主張しています。外交・安全保障政策に関しては、カナダ軍のアフガニスタン派兵からの撤退やイラク戦争への反対など、平和主義的な傾向が見られます。

歴代党首

初代: ルシアン・ブシャール（1990年 - 1996年）
2代: ミチェル・ゴーティエ（1996年 - 1997年）
3代: ジル・ジュセップ（1997年 - 2011年）
4代: ダニエル・パイェ（2011年 - 2013年）
5代: マリオ・ボーリュー（2014年 - 2015年）
6代: マルティーヌ・ウエレ（2017年 - 2018年）
* 7代: イブ・フランソワ・ブランシェット（2019年 - 現在）

ブロック・ケベコワは、ケベック州の独自性を連邦レベルで主張し続ける、カナダ政治において独特な存在感を持つ政党です。

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