ブローニュ＝ビヤンクール地方音楽院

パリに隣接するフランス、ブローニュ＝ビヤンクール市に位置する市立音楽院です。正式名称は「Conservatoire à rayonnement régional de Boulogne-Billancourt（コンセルヴァトワール・ア・レヨンヌモン・レジオナル・ド・ブーローニュ＝ビヤンクール）」で、略称はCRR de Boulogne-Billancourtです。フランス国内に41校存在する地域圏立音楽院の一つに数えられています。

沿革と概要

本音楽院は、著名な作曲家であるマルセル・ランドスキの後押しを受けて、1959年に「国立音楽学校（école nationale musicale）」として設立されました。その後、フランスの音楽・舞踊教育における専門教育ネットワークに加わり、1979年には地方自治体が運営する「地方音楽院（Conservatoire de Région）」として再編成されました。基本的な財政基盤はブローニュ＝ビヤンクール市によって支えられています。この再編は、他の諸外国における教育機関の変革と同様に、教員の質や歴史、置かれた状況などを考慮して行われたものです。

現在、約1400人の学生が在籍しており、そのうち約400人が専門課程で学んでいます。教育・運営スタッフは教授や管理者など102名、技術職や事務職員など28名で構成されており、合計130名の体制で運営されています。

本音楽院は、教育機関として主に以下の三つの重要な使命を担っています。

子供たちの器楽・声楽導入教育と芸術的感性の育成
将来、音楽や舞踊の分野で活躍するプロフェッショナルの養成
地域社会への芸術普及

教育プログラム

教育は大きく導入教育と専門教育に分かれています。

導入教育

主に12歳以下の若い才能を対象とした「観察課程および指導課程（Cycle d'Observation et d'Orientation Musicales, COOM）」が設けられています。この課程では、教育的にも経済的にも配慮された環境で、子供たちが音楽や舞踊の基礎的な訓練を開始できます。レッスンを通してスタッフが子供たちの適性を観察・審査し、その結果を踏まえて生徒は自身が学ぶ楽器を選択します。

12歳に達した生徒には、一般教育機関との提携プログラムに参加する道が開かれています。中学校と連携した「時間指定クラス（CHAM/CHAD）」に所属することで、通常の中学校の授業時間外に、音楽や舞踊の専門教育を並行して受けることが可能となります。

専門教育

将来的に高等音楽院への進学を目指す学生のために、「高等教育準備クラス（Cycle Préparatoire à l’Enseignement Supérieur, CPES）」が用意されています。この課程を通じて、フランスの国家音楽資格（DNSPM）や国家俳優高等資格（DNSPC）の取得を目指すための高度な専門準備教育を受けることができます。ただし、2020年時点において、首都圏でDNSPMを独自に交付できる教育機関は、パリ国立高等音楽学校（CNSMDP）、パリ・ブローニュ＝ビヤンクール高等芸術教育センター（PSPBB）、サン＝ドニ高等芸術センター（Pôle Sup'93）に限られています。

芸術普及と特色ある分野

本音楽院は、ブローニュ＝ビヤンクール市の文化事業の一環として、多様な芸術普及活動を展開しています。年間を通じて、演奏会、舞台公演、オーディション、マスタークラス、講演会などが開催され、学生や教員、そして地域住民が芸術に触れ、交流する貴重な機会を提供しています。

教育プログラムの中には、比較的珍しい専門分野も含まれています。例えば、音楽音響科、オンドマルトノ科、古楽科などは本音楽院の特色の一つです。また、新たな芸術創造を支援するため、コンポーザー・レジデンス（作曲家滞在制度）の受け入れや作曲委嘱といった創作事業にも積極的に関わっています。加えて、近年ではジャズ科や演劇科の設置に向けた準備も進められており、教育分野の更なる拡大を図っています。

組織構成

教育部門は以下の七つの学科を中心に構成されており、さらにそれぞれの学科内で楽器や専門分野、教育課程に応じて細かくクラス分けがなされています。

器楽科
声楽科
古楽科
室内楽・管弦楽科
作曲・教養科
音響技術科
舞踊科

これらの組織構造のもと、本音楽院は幅広い世代と専門分野に対応した質の高い音楽・舞踊教育を提供し、地域文化の振興にも貢献しています。

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