プジョー・106

プジョー106：コンパクトカーの傑作とWRCへの足跡

プジョー106は、フランスの自動車メーカー、プジョーが1991年に発売した小型車です。シトロエン・サクソとプラットフォームを共有する姉妹車関係にあり、そのコンパクトなボディと多様なエンジンバリエーション、そしてスポーティなモデル展開で人気を博しました。

エンジンバリエーションとスポーティモデル

106は、1.0L、1.1L、1.3L、1.4L、1.5Lディーゼルエンジンに加え、1.6LのDOHCエンジンを搭載したXSi（後に1.6Lに排気量アップ）や、高性能モデルのS16を用意。S16の「S」は、フランス語でバルブを意味する「Soupape」に由来します。強化されたボディ剛性と相まって、スポーティな走りを実現し、プジョーのラインナップの中でも特にスポーツ志向の高いモデルとして高い人気を獲得しました。

WRC参戦とセバスチャン・ローブ

106は、ラリー競技にも積極的に参戦しました。106 Maxiは、エントリーモデルのラリーカーとしてWRC（世界ラリー選手権）に出場。後にWRCで9連覇を達成するセバスチャン・ローブ選手も、106 Maxiでキャリアをスタートさせたことで知られています。この経験は、プジョー106のスポーツ性と信頼性を世界に知らしめる大きな要因となりました。

多彩な特別仕様車

ヨーロッパ市場では、106は非常に多くの特別仕様車が販売されました。日本でも並行輸入されたモデルを中心に、その魅力的なバリエーションを紹介しましょう。

Rallye

競技ベースのモデルながら、走行快適性も考慮されたRallye。軽量化されたボディによる軽快な走りは、ホットハッチファンを魅了しました。1.3Lエンジンから1.6Lエンジン、さらにはS16と同型のDOHCエンジンを搭載したモデルも登場。快適装備はオプションでしたが、特に後期のRallye 16Vは、並行輸入業者によってエアコン装着車が多く輸入されました。

Griffe

「Griffe」は、プジョーのシンボルであるライオンが縄張りを示す爪痕を意味します。高級志向のモデルで、上質な本革シートやシックなボディカラーが採用されました。1.6Lエンジンを搭載し、3ドアと5ドアモデルが設定されましたが、マイナーチェンジ前の限定生産だったため、日本への輸入台数は非常に少なかったです。

日本での販売

日本では、1995年にXSi（1.6L）が限定販売され、1996年のマイナーチェンジ後はS16が正規輸入されました。右ハンドル仕様は存在しましたが、日本市場向けに必須のカーエアコンを設計上搭載できなかったため、姉妹車のサクソ同様、左ハンドル仕様のまま輸入されました。

特別仕様車として、「日本におけるフランス年」を記念した『セリー・スペシャル1998』（250台限定）や、最終モデルの『リミテッド』などが存在します。『セリー・スペシャル1998』は、フランス国旗をイメージしたインディゴブルー、ビアンカホワイト、チェリーレッドの3色が用意され、特にビアンカホワイトとチェリーレッドは非常に希少です。

まとめ

プジョー106は、そのスポーティな走り、多様なバリエーション、そしてWRC参戦という華々しい歴史を持つ、魅力的な小型車でした。コンパクトカーながら、多くのユーザーを魅了し、自動車史にその名を残す一台と言えるでしょう。2003年に生産終了しましたが、その人気は現在でも根強く、多くの愛好家に支持されています。後継車種として、2005年から生産されている107があります。

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