プネウマ

プネウマ (Pneuma)

プネウマ（古代ギリシア語: πνεῦμα）は、元来「気息」「風」「空気」を意味する言葉です。しかし、ギリシア哲学においては、単なる物理的な現象を超え、存在の根源的な原理として捉えられました。生命、呼吸、力、エネルギー、精神、超自然的な存在、聖なる権力など、多岐にわたる概念を含む言葉として用いられました。

ギリシア哲学におけるプネウマ

存在の原理としてのプネウマ

アナクシメネスは、プネウマを万物の根源であり、宇宙全体を包括する物質であると考えました。プネウマは、世界を構成する基本的な要素であり、あらゆるものの生成と変化に関わるとされました。

生命を活気づけるプネウマ

ヒポクラテスらは、空気中のプネウマ（精気、空気、気息）が体内に取り込まれることで、生体が活気づけられると考えました。生命維持に不可欠な要素として、プネウマの存在を重視しました。

プシュケーとの関連

アリストテレスは、植物プシュケー、動物プシュケー、理性プシュケーの3種類のプシュケー（精気）を区別しました。それぞれのプシュケーは、生命の異なる側面を司ると考えられました。ローマ時代のガレノスも、肝臓にある自然精気、心臓にある生命精気 (pneuma zoticon) 、脳にある動物精気 (pneuma physicon) の3つを提唱し、プネウマが生体の各機能に深く関与していることを示唆しました。

アリストテレスやガレノスのプシュケー（精気）は、スピリトゥスとして表記されることもあります。プネウマとプシュケーは、生命や精神を理解するための重要な概念として、古代ギリシアの思想家たちによって深く探求されました。

キリスト教におけるプネウマ

キリスト教においては、プネウマは「聖霊」と訳されます。神の力、聖なる息吹として、信仰の中心的な概念となっています。聖霊は、信者に神の恵みを与え、導き、力を与える存在として捉えられています。

現代におけるプネウマ

現代においても、プネウマは哲学、宗教学、心理学など、さまざまな分野で研究対象となっています。生命、精神、意識といった根源的な問いを探求する上で、重要な概念として再評価されています。

参考文献

川田殖「古代ギリシア人の生命観 : 原初時代からプラトンまで」『山梨医科大学紀要』第2巻、1985年、29-40頁。

関連項目

霊性
霊魂
生気論
プシュケー
聖霊
魂
精神 - スピリット
プラーナ（インド）

外部リンク

デジタル大辞泉『プネウマ』 - コトバンク
* 『プノイマチズム』 - コトバンク

もう一度検索