プライド・運命の瞬間

映画『プライド・運命の瞬間』

『プライド・運命の瞬間』（プライド・うんめいのとき）は、1998年5月23日に東映によって公開された日本映画であり、極東国際軍事裁判の結審50周年及び東日本ハウス（現在の日本ハウスホールディングス）創立30周年を記念する作品です。この映画は、東京裁判でA級戦犯として裁かれた東條英機を主人公に据え、戦争責任を敗戦国に全て押し付けようとする連合国に対抗した彼の姿を描いています。

物語の概要

本作は、東條が法廷で「たったひとりの戦い」に挑む姿を描写しています。従来の見方にとどまらず、彼一人の人間としての物語が展開されます。監督の伊藤俊也は当初、主人公を戦犯の無罪を主張したインドのラダ・ビノード・パール判事に設定しましたが、日本を舞台にした映画では日本人を主役にするべきだとの観点から企画を練り直しました。

調査を進める中で、東京裁判においては死刑が言い渡される運命にあったものの、最も力強く戦った人物が東條であると考えるに至り、彼を主人公とする決断を下しました。映画は史実に基づき、法廷のセットを現存する設計図に忠実に再現し、裁判の状況をリアリティのある形で描いています。映画内では、過去のフィルムを使用せずに、独自の映像美で裁判の様子を表現しています。

キャストと受賞歴

東條英機を演じた津川雅彦は、遺族などからの取材を重ね、彼の人物像をリアルに伝える演技に成功しました。その結果、津川は第22回日本アカデミー賞で優秀主演男優賞を受賞しました。東條の孫、東條由布子さんは津川のパフォーマンスを「まるで祖父が戻ってきたようだ」と称賛。これは映画の制作が「時代の変化」を反映しているとも発言しました。

スタッフ

本作のスタッフは以下の通りです：

• - 監督：伊藤俊也
• - 製作者：浅野勝昭
• - 脚本：松田寛夫、伊藤俊也
• - 音楽：大島ミチル
• - 美術：内藤昭
• - 製作：東京映像制作、東映

また、2015年7月8日には東映ビデオからDVDが発売され、映像特典として予告編とフォトギャラリーも収められています。

批判と論争

この映画は公開前から賛否の声を巻き起こしました。東條の描写や東京裁判の判決に対する批判、さらには日中戦争や太平洋戦争に対する見解について論争が起きました。特に、映画の中で「自衛の戦争」「アジア解放の戦争」とする描写が存在し、南京大虐殺について疑問を呈する東條のセリフも含まれていました。

インド、韓国、中国などからも強い反発があり、特にインド政府は映画での日本によるインド解放への支援についての描写を否定し、協力を拒否しました。さらに、左派系の識者やジャーナリストからは「右翼映画」との批判も受け、立ち上がった反対運動もありますが、最終的には145の劇場で上映されることとなりました。

監督の伊藤は南京事件についての意見を述べ、「私は虐殺があったと思うが、映画ではそれを登場人物に語らせるしかない」と言及しました。映画が受けた波紋は、多面的であり、歴史に対する見解の違いや文化的背景の違いを浮き彫りにするものでした。

このように『プライド・運命の瞬間』は、ただの映画としてだけでなく、歴史的・社会的な議論を引き起こす重要な文献となっているのです。

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