プライマリ・ケアとは？意味をやさしく解説

プライマリ・ケアとは

プライマリ・ケアは、患者の心身を総合的に診療する医療分野です。初期段階での健康状態の把握や救急処置、日常的な病気や軽度の外傷の治療、訪問診療などを行います。また、必要に応じて専門医への紹介も担当します。さらに、医療的な介入だけでなく、患者の生活環境や社会的背景を考慮し、地域の支援団体を紹介する「社会的処方」もプライマリ・ケアの重要な役割として認識されています。

プライマリ・ケアの担い手

プライマリ・ケアは全ての臨床医に必要な能力ですが、特にこの分野を専門とする医師を総合診療医（ジェネラリスト）と呼びます。総合診療医は、特定の専門分野に特化した専門医（スペシャリスト）とは異なり、幅広い知識と経験を持ち、患者のあらゆる健康問題に対応します。総合診療医は、外来診療や在宅医療を中心とする家庭医と、病院内で総合的な診療を行う病院総合診療医（ホスピタリスト）に分類されます。

プライマリ・ケアの定義

米国科学アカデミー 医学部門の定義

1996年の定義では、「患者の抱える問題の大部分に対処でき、継続的なパートナーシップを築き、家族及び地域という枠組みの中で責任を持って診療する臨床医によって提供される、総合性と受診のしやすさを特徴とするヘルスケアサービス」とされています。

世界[[保健機関]]（WHO）の定義

WHOは、プライマリ・ケアを「ケアやゲートキーパー以上の役割であり、最初の第一線としてアクセスされ、継続的・統合的に調整されたケアを提供する保健制度の中心的な役割」と定義しています。さらに、短期的な疾病だけでなく、患者の長期的な健康状態を把握し、必要に応じて病院への紹介を行う機能も担っています。

各国の制度

英国

英国では、総合診療医（GP）は医学部卒業後、4～5年の専門研修を受けた医師を指します。研修内容は、救急医学、小児科学、精神医学など多岐にわたり、病院と地域での研修が含まれます。

米国

米国では、家庭医療は3年間の専門研修によって専門医認定されるスペシャリティです。内科と並び、general practiceを志向するスペシャリティとして位置づけられています。

アイルランド

アイルランドでは、政府機関であるHealth Service Executive（HSE）が運営する保健センターがプライマリ・ケアを担っています。

日本の現状

日本では、長らくプライマリ・ケアを専門とする医師の制度が確立されておらず、開業医や一般病院の内科医、小児科医などがその役割を担ってきました。しかし、高齢化に伴い、複数の疾患を抱える患者が増加し、医療費抑制の必要性が高まっていることから、プライマリ・ケアの重要性が認識されるようになり、制度の整備が進められています。

近年では、日本プライマリ・ケア学会や日本家庭医療学会が認定する専門医制度が発足しましたが、ジェネラリストとしての専門性は統一されていません。関連する３学会が統合し、日本プライマリ・ケア連合学会と日本病院総合診療医学会が設立され、それぞれの専門性を追求する動きが活発化しています。

2017年には、日本専門医機構による総合診療専門医制度が発足し、プライマリ・ケアの専門性確立に向けた取り組みが進められています。

医師臨床研修制度

日本の医師臨床研修制度では、プライマリ・ケアの基本的な診療能力の修得が目標とされています。具体的には、内科と救急医療が必須であり、外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科の中から2科を選択して研修を行う必要があります。また、1ヶ月以上の地域医療研修も必須とされています。

外部リンク

- 日本プライマリ・ケア連合学会
- 日本病院総合診療医学会
- Primary Care（英語） - Definitions from American Academy of Family Physicians AAFP

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