プライマル・フィア

ドイツのシュトゥットガルトを拠点に活動するヘヴィメタル・バンド、プライマル・フィア（PRIMAL FEAR）は、特にその中心人物として、著名なメタル・バンドでのキャリアを持つミュージシャンたちが名を連ねていることで知られています。元ガンマ・レイのヴォーカリスト、ラルフ・シーパースと、SINNERのベーシスト兼ヴォーカリストであるマット・シナー、そしてギタリストのトム・ナウマンが結成に関わりました。

結成の背景

バンドの誕生には、ヴォーカリストのラルフ・シーパースの特別な経緯が深く関わっています。1994年にガンマ・レイを脱退した後、彼は英国の伝説的なメタル・バンド、ジューダス・プリーストの後任ヴォーカリストを選ぶオーディションに参加します。しかし、英語が母国語ではないという理由から惜しくも選考に漏れ、その後の音楽活動について岐路に立たされました。ラルフはこの時、一時は引退さえ考えていたと言われています。そんな彼を再び音楽の世界へ引き戻し、新たな道を共に歩むことを提案したのが、長年の盟友であるSINNERのマット・シナーとトム・ナウマンでした。この出会いが、ラルフに音楽活動再開を決意させ、「自分たちの本当にやりたい音楽を追求しよう」という強い意志のもと、プライマル・フィアの活動がスタートしました。

デビューから確立へ

準備期間を経て、1997年にはドラマーのクラウス・シュペリングも加わり、本格的なバンドとしての体制が整います。いくつかの候補の中から「プライマル・フィア」というバンド名が選ばれ、いよいよ世界に向けてその咆哮を放つ時が来ました。日本では同年12月に、そしてヨーロッパでは翌1998年 2月に、記念すべきデビュー・アルバム『Primal Fear』がリリースされます。このデビュー作は、母国ドイツを中心にヨーロッパ各国で非常に高い評価を受け、熱狂的に迎え入れられました。アルバムリリース後のツアー開始に伴い、バンドは二人目のギタリストとしてステファン・レイビングを迎え入れ、そのサウンドをさらに強化しました。

当初、メディアからは「ラルフとマットによるプロジェクト」といった見方をされることも少なくありませんでした。彼らはこれを払拭し、プライマル・フィアを単なるプロジェクトではなく、真のバンドとして認識させるために、精力的なライブ活動を展開します。特に1998年だけで60回ものライブを行い、その実力とバンドとしての結束力を示しました。

1999年には、セカンド・アルバム『Jaws Of Death』を発表。このアルバムのリリースは、プライマル・フィアが名実ともに本格的なバンド活動へと移行したことを印象付けました。しかし、この時期にギタリストのトム・ナウマンが健康問題を理由にバンドを離れることとなり、ツアーには当時SINNERに在籍していたアレックス・バイロット（後のサイレント・フォース）がサポートとして参加しました。この年の終わりには、初めて日本の地を踏み、ファンにそのパフォーマンスを披露しました。

メンバーチェンジと飛躍

2000年、SINNERでトム・ナウマンの後任を務めていた元サンダーヘッドのヘニー・ウォルターが、正式にプライマル・フィアのメンバーとなります。新たな布陣でこれまで以上に活発な活動を展開し、日本では2000年 12月、ヨーロッパでは2001年 1月にサード・アルバム『Nuclear Fire』をリリース。この作品はバンドにとって大きな飛躍となり、その地位をさらに確立しました。

この頃になると、マット・シナーはプライマル・フィアでの活動に比重を置くようになり、SINNERの新作制作を延期してプライマル・フィアの楽曲制作に注力。その成果として、2002年には4作目となるアルバム『Black Sun』がリリースされました。しかし、同年末にはヘニー・ウォルターが脱退を表明し、結成時のギタリストであるトム・ナウマンが復帰するというメンバーチェンジが発生。さらに2003年にはドラマーのクラウス・シュペリングもバンドを離れ、後任には元アナイアレイターのランディ・ブラックが加入しました。この年には、バンドの軌跡を追ったDVD作品『The History Of Fear』もリリースされています。

2004年にリリースされた5thアルバム『Devil's Ground』は、彼らをドイツを代表するヘヴィメタル・バンドの一つへと押し上げる決定的な作品となりました。その後も2005年に6thアルバム『Seven Seals』、2006年には初のベスト・アルバム『Metal Is Forever - The very best of Primal Fear』を発表するなど、精力的な活動を続けます。

変遷を重ねるラインナップと現在の活動

2007年の7thアルバム『New Religion』のレコーディング中に、再びギタリストのトム・ナウマンが脱退。後任には、かつてバンドに在籍したヘニー・ウォルターが再度復帰しました。さらに2008年 3月にはギタリストのステファン・レイビングが脱退し、新たにマグナス・カールソンが加入するなど、主要メンバーの入れ替わりが続きました。2009年には8thアルバム『16.6(Before The Devil Knows You're Dead)』をリリース。2010年にはライブCD+DVDも発表しますが、同年9月にはヘニー・ウォルターが再びバンドからの脱退を表明。直後のツアーにはマットの盟友であるアレックス・バイロットがサポートとして参加し、後に正式メンバーとして迎え入れられることとなりました。

その後もバンドは活動を継続し、2012年に9thアルバム『Unbreakable』、2014年には10thアルバム『Delivering The Black』を発表。しかし、この時期にもドラマーの変遷があり、2014年8月にはランディ・ブラックの脱退が発表され、9月には元ANGRAのアキレス・プリースターが加入。さらに2015年 6月にはアキレスの脱退と、トム・ナウマンの三度目の復帰、そしてU.D.O.のメンバーだったフランチェスコ・ジョヴィーノが新たなドラマーとして加わるなど、目まぐるしいメンバーチェンジが繰り返されました。

このような変遷を経ながらも、プライマル・フィアはコンスタントに作品を発表し続け、2016年に11thアルバム『Rulebreaker』、2018年に12thアルバム『Apocalypse』、2020年7月24日に13thアルバム『METAL COMMANDO』、そして2023年9月1日には14thアルバムとなる『CODE RED』をリリースしました。現在のドラマーは2019年に加入したミヒャエル・エーレです。

度重なるメンバーの出入りがありながらも、ラルフ・シーパースとマット・シナーを中心とした強固な核を持ち、一貫してパワフルでメロディックなヘヴィメタル・サウンドを追求。日本へも1999年の初来日以降、複数回公演を行っており、根強い人気を誇っています。

ディスコグラフィー（主要作品）

オリジナル・アルバム

1997年 Primal Fear
1999年 Jaws Of Death
2000年 Nuclear Fire
2002年 Black Sun
2004年 Devil's Ground
2005年 Seven Seals
2007年 New Religion
2009年 16.6(Before The Devil Knows You're Dead)
2012年 Unbreakable
2014年 Delivering the Black
2016年 Rulebreaker
2018年 Apocalypse
2020年 METAL COMMANDO
2023年 Code Red

ライブ・アルバム

2010年 Live In The USA + 16.6 Live Around The World (CD+DVD)
2017年 Angels of Mercy – Live in Germany

コンピレーション

2006年 Metal Is Forever - The very best of Primal Fear
2017年 Best of Fear

現在の主要メンバー

ラルフ・シーパース (Ralf Scheepers) - ボーカル
マット・シナー (Mat Sinner) - ベース/ボーカル
トム・ナウマン (Tom Naumann) - ギター
アレックス・バイロット (Alex Beyrodt) - ギター
マグナス・カールソン (Magnus Karlsson) - ギター (※ツアー不参加)
ミヒャエル・エーレ (Michael Ehré) - ドラムス

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