プラズマティックス

プラズマティックス（Plasmatics）

アメリカ合衆国ニューヨークで1977年に産声を上げたプラズマティックスは、ハードコア・パンクの潮流の中で異彩を放ったバンドです。彼らの名は、その過激かつ破壊的なステージパフォーマンスによって、1970年代後半から1980年代にかけて広く知れ渡りました。単なる音楽演奏に留まらず、チェーンソーで楽器やテレビを破壊したり、自動車を爆破したりといった常軌を逸した演出は、観客に強烈な衝撃を与え、賛否両論を巻き起こしました。

バンドの象徴であり、そのパフォーマンスの中心にいたのが、類まれなるカリスマ性を放つボーカリスト、ウェンディ・O・ウィリアムズでした。彼女は上半身裸にテープを貼る、モヒカン刈りにチェーンソーを持つといった挑発的なヴィジュアルと、圧倒的なステージングで観衆を魅了しました。その破天荒な振る舞いから、「ロックンロールの女王」や「史上最も過激な女性パフォーマー」などと呼ばれ、数々の伝説的なエピソードを残しています。そのパフォーマンスはしばしば物議を醸し、逮捕されることもあったと言われています。しかし、ウェンディは音楽活動の傍ら、動物保護など社会的な活動にも関心を示していました。ロックシーンにおいて強烈な印象を残した彼女でしたが、1998年にコネチカット州の自宅近くで、48歳という若さで自らの命を絶ちました。

バンドのメンバーは流動的でしたが、ウェンディ・O・ウィリアムズを中心に活動を展開しました。ギタリストのウェス・ビーチはバンドの重要なメンバーであり、リチャード・ストッツも初期からウェンディを支えました。特筆すべきは、初期にベーシストとして日本人である船原長生が在籍していたことです。その他、ジーン・ビューヴォアなど、多くのミュージシャンがプラズマティックスに関わりました。最終的なラインナップはウェンディ、ウェス・ビーチ、クリス・ロマネッリ、マイケル・レイ、レイ・キャラハンの5人でした。

以下に、プラズマティックスの主なメンバーとディスコグラフィを記します。

主なメンバー

最終ラインナップ
ウェンディ・O・ウィリアムズ – ボーカル (1978–1983, 1987–1988)
ウェス・ビーチ – ギター, キーボード (1979–1983, 1987–1988)
クリス・ロマネッリ – ベース, キーボード (1981–1983, 1987–1988)
マイケル・レイ – ギター (1987–1988)
レイ・キャラハン – ドラム (1987–1988)

旧メンバー
リチャード・ストッツ – ギター (1978–1983)
船原長生 – ベース (1978–1980)
ジーン・ビューヴォア – ベース, キーボード (1980–1981)
グレッグ・スミス – ベース (1983)
ステュ・ドイッチュ – ドラム (1978–1981)
ジョーイ・リース – ドラム (1981–1982)
T・C・トリヴァー – ドラム (1982–1983)

ディスコグラフィ

スタジオ・アルバム
『ニュー・ホープ・フォー・ザ・レッチト』（New Hope for the Wretched）- 1980年（旧邦題『セクシャル・ダイナマイト』）
Beyond the Valley of 1984 - 1981年
Coup d'etat - 1982年
Maggots: The Record - 1987年
Coup de Grace - 2000年（没後リリース）

EP
Butcher Baby - 1978年
Dream Lover - 1979年
Monkey Suit - 1980年
* Metal Priestess - 1981年

プラズマティックスは、その音楽性はもちろんのこと、常識を打ち破るパフォーマンスによって、パンク史において特異な地位を築きました。彼らのサウンドはハードコア・パンクを基調としながらも、後のクロスオーバー・スラッシュなどにも通じる要素を持っており、多くの後続バンドに影響を与えたと言えます。ウェンディの死によってバンドの歴史は幕を閉じましたが、その過激な伝説は語り継がれています。

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