プラズマライン (ゲーム)

プラズマライン (PLAZMALINE)

概要

テクノソフトから1980年代半ばに発売された『プラズマライン』(PLAZMALINE) は、当時の主要な8ビットパソコン向けに展開された画期的な宇宙レースゲームです。PC-8800シリーズ、FM-7/FM-77、MZ-2200、X1シリーズといった高性能機から、ホビーパソコンであるPC-6001mkIIに至るまで多機種に移植されました。

特筆すべきは、本作が日本で初めてコンピュータゲームにポリゴン描画技術を用いた作品の一つと推測されている点です。作者である吉村功成氏によって、わずか3ヶ月という短期間で開発されたと言われています。従来のワイヤーフレーム表現とは一線を画す、リアルタイムでの立体的な3D描画を実現したその技術力は、発売から数十年を経た現在でもインターネット上のコミュニティで高く評価され、語り継がれています。特に、隕石の描画には光源演算が用いられており、これは日本におけるリアルタイムポリゴン描画の黎明期を象徴する技術的快挙でした。本作で培われた技術は、後の『ウィバーン』や『スタークルーザー』といったテクノソフトの代表作へと受け継がれていきます。

ゲーム内容

ゲームの舞台は広大な恒星系。プレイヤーはプラズマドライブ搭載の高性能スターシップを操縦し、白熱のレースに挑みます。コースはチューブ状のシールドで囲まれており、プレイヤーは設置されたチェックポイントを順に通過していく必要があります。

航路には小惑星や様々な障害物が存在し、これらを巧みに避けながら進む必要があります。さらに、宇宙海賊『ジャッカーズ』からの襲撃や、ライバルとなる他チームの宇宙船からの妨害もプレイヤーを待ち受けます。レースを有利に進めるため、コース上に配置された飛行用の推進剤やシールド用エネルギーといった補給アイテムを取得したり、レースオフィシャルの宇宙艦隊戦艦から補給を受けたりすることも重要です。

プレイヤーの目的は、他の参加宇宙船を追い抜き、様々な障害や敵の攻撃による破壊、あるいは推進剤切れを回避しながら、最終ゴールに誰よりも早く到達することです。

ストーリー

宇宙歴2384年。長きにわたる紛争の時代が終わり、平和な日々が続く銀河系では、プラズマドライブを装備したスターシップによるレースが人々の間で絶大な人気を集めていました。中でも最大規模と人気を誇るのが、バルシア星系を舞台に開催される「プラズマライン」です。このレース名は、第64回大会を観戦したTS-9星系オミート皇帝が、プラズマドライブが描く航跡の美しさに感嘆して命名したとされています。

太陽系チームは、第1024回大会で初めてこのレースに参戦しました。彼らが持ち込んだスターシップは、予選から驚異的なパフォーマンスを見せつけ、瞬く間に優勝候補に挙げられる存在となります。しかし、この活躍を快く思わない勢力もあり、特に過去に太陽系と敵対関係にあったオーン星系などは、密かに妨害工作を企てているという噂が流れていました。そして大会当日、その噂は現実のものとなります。各チームのスターシップが一斉にスタートを切る中、太陽系チームのスターシップだけが動けませんでした。何者かによってエンジンに細工が施され、過負荷による安全装置が作動したためでした。急いでスターシップの修復を終えたとき、すでに他の参加艇は遥か先へと飛び去っていましたが、太陽系チームはレースを諦めず、最後尾から奇跡的な追い上げを開始します。

ルールとシステム

プレイヤーのスターシップには推進剤とシールドエネルギーという二つのリソースがあり、これらがゼロになると失格となります。推進剤は加速や姿勢制御を行うたびに減少し、シールドエネルギーはコースの壁、障害物、他船からの攻撃など、何かに接触するたびに減少します。

コース上のチェックポイントは、必ず低速（後述のSAFETY状態）で通過しなければなりません。高速で通過するとコースアウトと見なされ、レースから除外されます。最終的な勝利条件は、他の全ての参加艇よりも先に最終ゴールに到達することです。

自機の速度は最大520（単位不明）、後退速度は最大100まで可能です。速度に応じて、操縦席の表示が変化します。速度0では「HALT」、100未満では「SAFETY」、100以上では「NORMAL」、200以上では「HIGH」、そして500以上では「MAX.」と表示されます。コース上のアイテム取得やチェックポイントの通過には、「SAFETY」状態であることが必要です。

コース上には武器アイテムが特定の場所に配置されています。これを入手すると、発射キーで武器を使用し、障害物や妨害してくる敵船を破壊できるようになります。ただし、レースの公式ルールでは武器の使用は禁止されています。武器を所持したままチェックポイントを通過すると、「weapon penalty retire」として失格になってしまうため、チェックポイントに到達する前に武器を使い切る必要があります。

参加チームとシップ

レースにはプレイヤーが操作する太陽系チームを含む、個性豊かな複数のチームが参戦します。

太陽系（クェーサーRS2）: プレイヤーが所属するチーム。
ランタ星系（ピーク・ルーダ）: 友好関係にある、のんびりした性格のチーム。
ルシファ星系（ジーフ）: 銀河系で評判が悪く、太陽系とも関係が悪い。エイリゴン星系と結託した噂も。
アイロア星系（リーサット）: 明るい性格のパイロットが多い。銀河急便運送のベテランが操縦。
リジアン星系（タバルト）: 謎めいた孤立主義の星系だが、毎回レースに参加する。
エイリゴン星系（ルーフ・ガ・リオ）: 銀河連邦艦隊と戦った歴史を持つ。実力主義だが、裏での策謀も噂される。
バルシア星系（カノプス）: レース開催地の代表チーム。
オーン星系（オブザップ・ワス）: かつて太陽系に敗れた軍事国家。試作攻撃機を改造したシップを使用。
シェーダ星系（ヴァクセル）: 照明機器産業が主体の星系。暗黒星雲に強い先進的シップを持つ。
テタント星系（ヤークス）: 超一級品のみを追求する工業星系。初参加以来24連勝中のシップを擁する。

まとめ

『プラズマライン』は、当時のパソコンゲームとしては極めて先進的なポリゴンによるリアルタイム3D描画を実現し、後のテクノソフト作品や日本の3Dゲーム開発に大きな影響を与えた歴史的に重要な作品です。短期間での開発ながらも、技術的な挑戦とエンターテイメント性を両立させたその内容は、現在でも多くのファンに記憶され、語り継がれています。

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