プラット・アンド・ホイットニー PW1120

PW1120エンジンの概要

PW1120は、F100ターボファンエンジンを元にした派生型であり、イスラエルのF-4EやIAIラビの動力源としての期待が寄せられていました。このエンジンのライセンス生産はイスラエルのBet-Shemesh Engines Limitedによって計画されましたが、搭載予定の航空機はいずれも未完成に終わるという結果になりました。

開発経緯

PW1120の開発は1980年6月に始まりました。本エンジンは、F100のコアモジュールや燃料ポンプ、デジタル電子制御装置といった多くの要素を流用したもので、特に改良点としては、幅広の低圧圧縮機、単段非冷却の低圧タービン、軽量なコンバージェント/ダイバージェントノズルが挙げられます。このため、部品の約70%がF100と類似または共通しているため、イスラエル航空宇宙軍は特別な予備部品の管理施設を必要としませんでした。

実機試験は1982年6月に行われ、その飛行試験は1984年8月に完了しました。IAI社は、F-4Eの一機にPW1120を搭載し、強力かつ効率の良い動力を試験するプロジェクトを実施しました。試験に用いられたのは、F-4E-32-MC型戦闘機で、P&WのJA79-GE-17ターボジェットエンジンを置き換える形での実施でした。改良により、このF-4Eは1986年7月に初飛行を果たしました。

性能と影響

PW1120を搭載した改良F-4Eは、出力を高めることで、燃料消費率や推力重量比、操縦性が向上し、非常に良好な性能を発揮しました。例えば、出力が加わったことで、戦闘推力は13,530lbfに達し、アフターバーナーを使用すると20,585lbfにまで漲ります。これにより、マッハ1を超える速度を経済的に達成できるようになり、多数の爆弾を搭載した状態でも高い機動性を発揮することができました。

しかし、主な運用機として計画されていたIAIラビが1987年8月にキャンセルされたことで、PW1120の搭載プロジェクトも中止となりました。加えてF-4Eの計画も、出力の増加による技術的な課題や予算の問題によって実現しませんでした。1988年にはナメルのエンジン候補として名前が挙がりましたが、こちらも受注につながることはなく、結局は計画のみに終わりました。

仕様と搭載機

PW1120の一般的な特性には、全長4,110mm、直径1,021mm、乾燥重量1,292kgなどがあります。圧縮機は低圧3段と高圧10段の軸流式で、バイパス比は0.36:1です。搭載機にはIAIラビ、IAIナメル、F-4クルナス2000試験機などがあります。

まとめ

PW1120は、その設計と開発の背景に多くの革新要素を含み、特にイスラエル航空宇宙軍において期待されていましたが、最終的には搭載機の未完成や計画の中止により、実運用されることはありませんでした。

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