プラトニック (テレビドラマ)

プラトニック：愛と生と死の狭間で揺れる、切ない物語

2014年、NHK BSプレミアムで放送された『プラトニック』は、心臓疾患を抱える娘を持つシングルマザーと、彼女の前に現れた謎めいた青年の、悲恋を描いたドラマです。キャッチコピーである「愛したときが、彼が死ぬとき。」が示すように、この物語は、愛、生、死、そして家族の絆を繊細に描き出しています。

主人公の望月沙良は、心臓病を患う娘・沙莉のために、夫と離婚し、2人きりで生活を送っています。ある日、自殺願望を綴った掲示板サイトで、娘への心臓提供を願う書き込みをしたことから、物語は動き出します。その書き込みに、「僕のハートを差し上げます」と返信してきたのが、謎の青年でした。

青年は、悪性脳腫瘍を患い、余命いくばくもないことを明かします。沙良は、疑心暗鬼ながらも、青年にコンビニの店員として雇い、自宅に住まわせることに。当初、沙良の元夫や弟は、青年を拒絶しますが、彼の真実を知り、次第に受け入れるようになっていきます。

しかし、臓器提供には厳しい制限があります。青年が沙莉の心臓を提供するには、「一親等以内」の関係、つまり沙良と結婚する必要があるのです。2人は極秘裏に結婚届を提出します。この結婚は、沙良の娘を救うため、そして青年自身の生への執着と、沙良への愛が絡み合った複雑な決断でした。

青年は、穏やかでミステリアスな人物。自分の死を受け入れ、達観したような振る舞いをしますが、心の奥底では死への恐怖と絶望を抱えています。そんな青年の姿は、沙良や周囲の人々に、人生を見つめ直す機会を与えます。

2人は、次第に惹かれ合い、心を通わせていきます。しかし、運命は残酷です。青年の病状に奇跡的な変化が現れ、手術で助かる可能性が出てきたのです。青年の心臓提供は絶望となり、沙良は自らの命を絶とうとします。

そして、青年は強盗に襲われ、命を落とします。しかし、その死は、沙良と娘、そして周囲の人々を救うための、壮絶な自己犠牲の物語として描かれています。青年の最後のメッセージは、防犯カメラに記録され、沙良に届けられます。

このドラマは、野島伸司氏によるオリジナル脚本で、中山美穂さんと堂本剛さんの豪華共演も見どころです。中山さんは約12年ぶりの連続ドラマ主演、堂本さんも20年ぶりのNHKドラマ出演となります。野島氏にとってもNHKドラマ初脚本ということもあり、話題を呼びました。

主題歌には、ビリー・ジョエルの「ストレンジャー」と「オネスティ」が起用され、回によって使い分けられたり、ドラマのシーンと歌詞が重なったりするなど、ドラマと一体となった演出がなされています。

『プラトニック』は、単なるラブストーリーではありません。愛と生と死、そして家族の絆をテーマに、人間の感情を深くえぐり出す、感動的な物語です。それぞれの登場人物が抱える葛藤や苦悩、そして、希望と絶望が複雑に絡み合い、観る者の心を揺さぶる、忘れられない作品です。

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