脳腫瘍

脳腫瘍の概要

脳腫瘍（のうしゅよう）とは、頭蓋骨内の脳組織に存在する細胞から形成される異常な塊や新生物を指します。この腫瘍は脳細胞だけではなく、周囲の神経、血管、膜など、様々な種類の組織から発生する可能性があります。脳腫瘍の発生頻度は約10万人に12人で、発生原因は必ずしも特定されていないのが現状です。

症状

脳腫瘍は多くの場合、発見時には既にかなりの大きさに成長していることが多く、その際に脳浮腫を引き起こし、頭蓋内圧を上昇させます。その結果、よく見られる症状には、頭痛、吐き気、嘔吐などがあります。また、腫瘍の位置によって視野欠損や難聴、運動麻痺、言語障害が発生することもあります。特に、朝起きたときに頭痛が強くなる「morning headache」が一つの特徴とされています。女性の場合には、妊娠していないにも関わらず母乳が出る「乳汁漏出」が初期症状として現れることがあります。これはホルモンの異常によるもので、腫瘍が視床下部や脳下垂体に関連している場合に見られることがあります。

分類

脳腫瘍は発生した組織に基づいて分類され、主に以下のような種類があります：
1. 神経上皮組織性腫瘍：星細胞腫、膠芽腫など。
2. 神経鞘性腫瘍：神経鞘腫、神経線維腫など。
3. 髄膜性腫瘍：髄膜腫など。
4. 胚細胞性腫瘍：胚細胞腫や卵黄嚢腫瘍など。
5. 転移性腫瘍：他の部位から脳に転移したもの。
脳腫瘍は約130種類にも及ぶとされ、それぞれ度合いにより悪性度がWHOの基準に従って分類されています。

悪性度と浸潤性

脳腫瘍はその悪性度によってGrade IからGrade IVまで4つに分類されます。Grade Iは良性で限局性、Grade IVは悪性で予後が厳しい場合が一般的です。
悪性度が高いほど、腫瘍が周囲の正常な脳組織に浸潤しやすく、全摘出が難しい場合が多くなります。この浸潤性は、腫瘍と正常組織の境界が曖昧になるため、腫瘍の摘出が困難になる要因です。

発症年齢による分類

子供に多い脳腫瘍には髄芽腫や頭蓋咽頭腫があり、成人に多いものには髄膜腫や神経膠腫があります。これは年齢層によって発症しやすい部位が異なることから、診断においての参考になります。

代表的な治療法

脳腫瘍の治療は主に外科手術を通じて行われますが、場合によっては放射線療法や化学療法も用いられます。手術による摘出が最も基本的な治療であり、良性の場合は完全に摘出できることが望ましいですが、悪性の場合は周囲の組織の影響を考慮し、摘出が難しいこともあります。
放射線療法は腫瘍を縮小するために用いられ、集中的に照射する方法が選択されることもあります。化学療法は薬剤を使用し、特に血液脳関門を考慮しながら行われ、有効な薬剤が選択されています。

今後の治療法

新たな治療法としては、免疫療法、遺伝子療法、さらには粒子線や陽子線の治療法が研鑽されていますが、現在ではまだあまり普及していないのが実情です。

脳腫瘍は、個々の腫瘍タイプや患者の状況に応じて治療方針が異なるため、早期の診断と適切な治療が不可欠です。また、脳腫瘍に関連した文学や映画も数多く存在し、多くの人々に影響を与えています。

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