プラハ窓外放出事件

プラハ窓外放出事件

プラハ窓外放出事件は、1419年、1618年、そして1948年にプラハで発生した一連の事件を指します。これらの事件は、ボヘミア（現在のチェコ共和国）の歴史における重要な転換点となり、宗教的、政治的な対立が激化した時代を象徴しています。

第一次プラハ窓外放出事件 (1419年)

15世紀初頭、宗教改革の先駆者ヤン・フスがコンスタンツ公会議で異端とされ処刑されたことが、ボヘミアの人々の間に強い反発を引き起こしました。フスの死後、ヤコウベク・ゼ・ストシーブラが始めた聖餐における両形色拝領（パンと葡萄酒の両方を信徒に与えること）を求めるウトラクィスムが広まりましたが、カトリック教会はこれを認めず、聖務停止という対抗措置を取りました。

ボヘミア王ヴァーツラフ4世は、弟である神聖ローマ皇帝ジギスムントの仲介により、教会との和解を模索。プラハの教会をローマ教会へ復帰させることになりました。しかし、フス派が中心となっていた新市街参事会が解散され、カトリック信徒のみの新たな参事会が組織されたことにフス派勢力が激怒し、1419年7月30日、プラハ市庁舎を襲撃。市参事会員7名を窓から投げ落とし、暴徒によって惨殺しました。これが第一次プラハ窓外放出事件です。

ヴァーツラフ4世はこの事件の知らせに大きな衝撃を受け、卒中を起こして亡くなりました。事件を契機に、ドイツ人の追放や教会への襲撃が拡大し、フス戦争が勃発。ボヘミアにおける民族運動は1436年まで続きました。

第二次プラハ窓外放出事件 (1618年)

17世紀初頭、ハプスブルク家のフェルディナントがボヘミア王に即位。彼はカトリックを擁護し、プロテスタントを迫害する政策を推進しました。これに対し、プロテスタントのボヘミア貴族たちはフェルディナントを王として認めず、対立が深まりました。

1618年5月23日、プロテスタントの貴族たちはプラハ城を襲撃し、王の使者である国王顧問官2名と書記1名を城の窓から投げ落としました。地面まで20メートル以上の高さがありましたが、下に干し草が積んであったため、3名は一命を取り留めました。彼らはウィーンへ逃れ、フェルディナントにプラハの反乱を報告しました。この事件が第二次プラハ窓外放出事件であり、三十年戦争の引き金となりました。

事件後、ボヘミア貴族たちはプファルツ選帝侯フリードリヒ5世をボヘミア王に迎え、神聖ローマ帝国からの離反を試みました。ハプスブルク家は軍を派遣し、1620年の白山の戦いで勝利し、ボヘミアの支配を確立しました。しかし、財産の没収や国外追放といった苛烈な戦後処理は、他のプロテスタント諸侯の反発を招き、戦争が長期化する原因となりました。

第三次プラハ窓外放出事件 (1948年)

1948年3月10日、チェコスロバキアの外相ヤン・マサリクが、外務省の中庭で転落死しているのが発見されました。公式発表では自殺とされましたが、共産主義政権による暗殺説が根強く残っています。

ヤン・マサリクの死後、チェコスロバキアは完全に社会主義国となり、プラハの春（1968年）を除き、41年間ソ連の衛星国となりました。マサリクの死は「第三次プラハ窓外放出事件」と呼ばれることがあります。2004年のプラハ警察の調査では、マサリクが窓から突き落とされて殺害されたと結論付けられました。

プラハ窓外放出事件は、ボヘミアの歴史における宗教的、政治的な対立の激化を象徴する出来事であり、ヨーロッパ全体の歴史にも大きな影響を与えました。

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