プランダー作戦

プランダー作戦：ライン川渡河と連合国軍の勝利

1945年3月23日未明、第二次世界大戦終盤において、連合国軍はライン川渡河作戦「プランダー作戦」を開始しました。イギリス第2軍とアメリカ第9軍が中心となり、レースとヴェーゼル、リッペ川南岸において、ドイツ軍の防衛線を突破する一大作戦です。作戦全体の指揮は、第21軍集団司令官のバーナード・モントゴメリー元帥が行いました。

作戦の準備と開始

作戦開始に先立ち、3月16日から綿密な準備が行われました。兵站、道路建設、イギリス海軍による上陸用舟艇の輸送など、大規模な準備が、大量の煙幕を張るなど極秘裏に進められました。作戦は、ヴェーゼル近郊への空挺降下を伴う「ヴァーシティー作戦」と特殊部隊による作戦を同時進行させるなど、多方面からの連携を重視したものでした。

激戦と橋頭堡の構築

作戦開始当日は、4000門以上の火砲による4時間にわたる激しい砲撃で幕を開けました。イギリス空軍の爆撃機もヴェーゼルを昼夜攻撃し、ドイツ軍防衛線を混乱させました。イギリス第17機甲工兵大隊が、筏を使ってライン川を渡河し、迅速な舟橋架設に成功。わずか6時間15分で351メートル以上のM2浮橋が完成しました。この迅速な架橋は、作戦の成功に大きく貢献しました。

連合国軍は、イギリスXXX軍団、XII軍団、アメリカXVI軍団の3つの軍団を主力に攻撃を開始。イギリス第79機甲師団の特殊車両も活躍し、湿地帯での兵員輸送を円滑に進めました。第51ハイランド師団を先頭に、イギリス軍はレース近郊から攻撃を開始。続いて第15スコティッシュ師団も上陸、激しい抵抗を受けながらも、橋頭堡を拡大していきました。アメリカ第30師団も上陸し、局地的な抵抗を粉砕。アメリカ軍の損失は比較的少なかったものの、スコティッシュ軍はドイツ軍の激しい反撃を受けました。

ヴァーシティー作戦は、ドイツ軍の連絡を断つために行われました。激しい抵抗を受けましたが、マーケット・ガーデン作戦での教訓を生かし、空挺部隊は反撃を撃退。午後に第15スコティッシュ師団と連絡を確立しました。激戦の末、連合国軍は強固な橋頭堡を確保し、兵員と物資の輸送を有利に進めることができました。3月27日には、橋頭堡は東西35マイル、南北20マイルにまで拡大しました。

作戦の影響と余波

プランダー作戦は、ドイツ軍第1降下猟兵軍に大きな打撃を与えました。この部隊は、この地域で最も強力な部隊と見なされていましたが、直前の戦闘で戦力が低下しており、連合国軍の猛攻に耐え切れずに北東へ撤退しました。この撤退は、ドイツ軍の戦線に大きな亀裂を生じさせることとなりました。

ヨーゼフ・ゲッベルスの日記には、ライン川渡河の重大性と、ルール工業地帯包囲の危機が記されています。ドイツ軍は、兵力不足、火力の弱体化、航空支援の欠如など、深刻な問題を抱えていました。撤退を余儀なくされたドイツ軍は、作戦開始から一週間で3万人の捕虜を出しました。

イギリス首相ウィンストン・チャーチルは、作戦を視察し、その成功を目の当たりにしました。チャーチルとモントゴメリーは、ライン川を挟んでドイツ側の岸を視察、その脆弱性を実感しています。

軍事的な評価と批判

プランダー作戦は成功しましたが、モントゴメリーの慎重すぎる作戦遂行は、アメリカ軍司令官の反感を招きました。モントゴメリーは、市場ガーデン作戦の失敗や、アントワープ解放の遅れなど、過去に批判を受けており、この作戦についても、慎重すぎるあまり、ドイツ軍に反撃の機会を与えたという批判がありました。また、大規模な空挺作戦の必要性についても疑問視されました。

一方、レマーゲンの戦いで確保されたライン川の橋が、ドイツ軍の予備兵力を南へ引きつけ、プランダー作戦への反撃を抑制したという見方もあります。ヴェーゼルの湿地帯も、特殊な資材を必要とする大きな障害でしたが、連合国軍はそれを克服しました。パットン将軍のライン川渡河も、モントゴメリー作戦への対抗意識もあったといわれています。

プランダー作戦は、連合国軍のライン川突破という大きな勝利であり、ヨーロッパ戦線終結への道を切り開きました。しかし、その作戦遂行については、現在も様々な議論がなされています。

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