プリズン・エスケープ 脱出への10の鍵

『プリズン・エスケープ 脱出への10の鍵』：自由への執念とスリリングな脱獄劇

2020年公開のイギリスとオーストラリア合作によるスリラー映画『プリズン・エスケープ 脱出への10の鍵』（原題：Escape from Pretoria）は、アパルトヘイト時代の南アフリカ共和国を舞台に、政治犯たちの壮絶な脱獄計画を描いた実話に基づいた作品です。監督はフランシス・アナン、主演はダニエル・ラドクリフとダニエル・ウェバーが務め、緊迫感あふれる展開と、自由への強い意志が観る者を魅了します。

アパルトヘイト下の抵抗と投獄

舞台は1978年の南アフリカ共和国。アパルトヘイト政策下で、ティム・ジェンキンとスティーヴン・リーは、黒人解放運動を支持するパンフレットの配布を理由に逮捕されます。白人でありながら黒人解放を訴えたことが罪として問われ、彼らはそれぞれ12年と8年の懲役を言い渡され、厳重な警備で知られるプレトリア中央刑務所に収監されます。

絶望的な状況と脱獄計画

プレトリア中央刑務所は、脱出が不可能ともいわれる難攻不落の施設です。高い壁、厳重な監視体制、脱獄の試みは死を意味するか、25年の懲役延長という厳しい罰則が待ち受けています。しかし、ジェンキンとリーは、獄中で反アパルトヘイト運動に携わっていたデニス・ゴールドバーグらと出会い、絶望的な状況の中でも脱獄を計画します。トンネルを掘ることも、壁を乗り越えることも不可能な状況の中、彼らは大胆なアイデアを思いつきます。

木製の鍵：緻密な計画と危険な作業

刑務所の作業場での木工作業に従事していたジェンキンは、周囲の監視を避けながら、刑務所の鍵を木で複製するという驚きの計画を立てます。これは並大抵の技術と忍耐力では不可能な、非常に危険かつ高度な作業です。何度も失敗を繰り返しながら、彼は鍵穴に合う鍵を一つずつ作成していきます。彼の並外れた技術と忍耐、そして周囲の協力を得ながら、脱獄に必要なすべての鍵を完成させるのです。

脱獄決行と緊迫の展開

脱獄の日、ジェンキン、リー、そしてレオナール・フォンテーヌの3人は、自作の鍵を使って脱獄を試みます。しかし、計画通りにはいかず、予期せぬトラブルが次々と発生します。倉庫での隠れ家発見の危機、鍵穴に合わない鍵、最後のドアを破壊する際の騒音など、彼らは絶体絶命の状況に何度も陥ります。それでも彼らは諦めず、知恵と勇気を振り絞って、ついに刑務所からの脱出に成功します。

キャストと製作

本作には、ダニエル・ラドクリフ（ティム・ジェンキン役）、ダニエル・ウェバー（スティーヴン・リー役）、イアン・ハート（デニス・ゴールドバーグ役）など、実力派俳優たちが名を連ねています。製作過程では、当初サム・ニールがキャスティングされていたものの、後に降板し、イアン・ハートに交代するなど、様々な出来事がありました。オーストラリアのアデレードでの主要撮影を経て、2020年に公開されました。

評価

『プリズン・エスケープ 脱出への10の鍵』は、批評家から高い評価を受けています。Rotten Tomatoesでは高い支持率を獲得し、スリリングな脱獄シーンが称賛されています。一方で、実話の重みを十分に表現しきれていないという指摘も見られますが、それでも高い評価を得ていることは、本作の持つエンターテイメント性の高さを示していると言えるでしょう。

まとめ

『プリズン・エスケープ 脱出への10の鍵』は、アパルトヘイトという暗い歴史の中で、自由と人権を求めて闘った人々の物語です。緻密に計画された脱獄劇、そしてその背景にある彼らの強い意志は、観る者に深い感動と興奮を与えてくれるでしょう。実話に基づいた物語だからこそ、その重みとスリルの両方を味わえる、見応えのある作品です。

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