プリティヴィー

プリティヴィー（Pṛthivī）は、インド神話において重要な役割を担う古代の地母神です。彼女の名前は「広き者」という意味を持ち、その存在は広大な大地を象徴しています。プリトヴィー（Pṛthvĭ）とも発音されることがあります。

神話において、プリティヴィーは天空神ディヤウスの妻とされ、インドラやアグニといった重要な神々を産み出したと伝えられています。彼女は、母なる大地（Pṛthivĭ Mātā）として、父なる天空（Dyauṣ Pitṛ）と対比される存在として語られます。特に『リグ・[[ヴェーダ]]』では、両数形のディヤーヴァープリティヴィー（Dyāvāpṛthivī）として、天地両神の一対として崇拝されています。

『リグ・[[ヴェーダ]]』には、プリティヴィーとディヤウスが共に天地両神として讃えられている6篇の独立讃歌が存在します。しかし、プリティヴィー単独の讃歌は1篇3詩篇にとどまり、これは彼女がディヤウスと密接な関係にあることを示唆しています。独立讃歌によれば、プリティヴィーは堅固であり、山々を支え、樹木を育み、道路を豊かにし、大地に活気をもたらすとされています。彼女は、生命を育む豊穣な大地そのものとして、人々に崇拝されていました。

また、『ヴィシュヌ・プラーナ』には、興味深い伝承が記されています。それによれば、農耕のなかった時代に、プリトゥという王が初めて大地を開墾し、豊かな実りをもたらしたとされています。この功績により、大地の女神はプリトゥにちなんでプリティヴィーと呼ばれるようになったと伝えられています。この伝承は、プリティヴィーが単なる自然神ではなく、人間の生活や文化に深く関わる存在であることを示しています。

プリティヴィーは、後に仏教にも取り入れられ、地天（じてん）として崇拝されるようになります。さらに、地蔵菩薩の起源の一つとも言われており、その影響はインド神話の枠を超え、仏教の世界にも及んでいます。

このように、プリティヴィーはインド神話における重要な女神であり、大地の象徴、豊穣の源、生命の母として、古代から現代に至るまで人々に崇拝され、畏敬の念を抱かれ続けています。彼女の存在は、自然への感謝と敬意の念を呼び起こし、私たちの心に深く刻まれています。

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