リグ・ヴェーダ

『リグ・ヴェーダ』についての詳細

概要

『リグ・ヴェーダ』（梵: ऋग्वेद、英: Rigveda）は、古代インドにおける重要な聖典であり、ヴェーダの一部として位置づけられています。この典籍は古代サンスクリットで書かれており、全体は10巻から成り立っています。特に、1028篇の讃歌が収められており、その中には11篇の補遺も含まれています。

呼称

『リグ・ヴェーダ』の名称には特別な意味があります。「リグ」とは、讃歌を構成する詩節の意味を持つ「リチ」の派生形です。また、「ヴェーダ」は「知識」を表します。これにより、単に『リグ・ヴェーダ』と呼ばれる場合、通常はその讃歌群を指すことになります。『リグ・ヴェーダ』の内容は、ホートリ祭官が讃歌を唱えるために用いられる祭典に関連しています。

歴史

『リグ・ヴェーダ』は古代から長らく口承によって伝えられてきたと考えられており、最も古いヴェーダとされています。その成立時期については明確ではありませんが、一般には紀元前1500年から1000年ごろの期間と見なされています。研究者の中には、バラタ族によって編纂されたとの考えもあり、歴史的文脈において徐々に形を成していったとされています。紀元前12世紀ごろには、現在の形へと整えられたとのことです。

構成

『リグ・ヴェーダ』は10の巻（マンダラ）から構成され、それぞれの巻にはさらに複数の篇（スークタ）が収められています。それぞれの讃歌は幾つかの詩節から成り、特定の詩節を引用する際は、巻の番号、篇の通し番号、詩節番号の3つを用いるのが一般的です。合計1028篇の讃歌が存在し、詩節の数は3から58まで多様です。主な韻律には、トリシュトゥブ、ガーヤトリー、ジャガティーがあり、全体の約80%を占めています。

テクストの伝承

『リグ・ヴェーダ』は、長い間テキストとして記録されず、口承のみで伝えられてきました。文字として記録されたのはおそらく1000年ごろであり、現存する最古の写本は1464年に遡ります。この聖典は、様々な流派に分かれて伝わっており、通常はシャーカラ版が広く使われています。19世紀にフリードリヒ・マックス・ミュラーによって校訂され、さらに新しいアーシュヴァラーヤナ版も2009年に刊行されました。

作者と内容

『リグ・ヴェーダ』の著者には、詩聖とされるリシたちがおり、その年代や具体的な階層についての情報は『アヌクラマニー』に記されています。第2巻から第7巻は特定の家系に属し、それぞれに異なる神に対する讃歌が収められています。この聖典では多くの神々に対し讃美を捧げており、供犠によってその加護を求める内容が中心となっています。

哲学と文学

興味深いことに、『リグ・ヴェーダ』には哲学的な内容を含むものや演劇的な要素を持つ作品もあります。具体的には、宇宙創造に関する詩や人間同士の対話などが含まれており、これらは後のウパニシャッド哲学へと通じる萌芽とも考えられています。また、一部の賛歌には呪術的なテーマも見受けられ、宗教的実践の一環としての意味合いを持っています。このように『リグ・ヴェーダ』は宗教、哲学、文学が交錯する豊かな典籍であり、インドの文化に多大な影響を与えてきたのです。

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