プリマスロック

プリマスロックとは

プリマスロック（Plymouth Rock）は、アメリカ合衆国を原産とするニワトリの品種です。19世紀後半、アメリカ東海岸のマサチューセッツ州において、食肉生産と採卵の両方に対応できる、いわゆる卵肉兼用種として開発されました。この品種は、その特徴的な外見や優れた生産性から、長年にわたり広く飼育されてきました。プリマスロックには、代表的な白と黒の横縞模様を持つ系統と、そこから派生した白色の系統が存在し、特に白色のタイプは現代の鶏肉生産において不可欠な存在となっています。

横斑プリマスロック

プリマスロックの中で最もよく知られているのが、白と黒の羽毛が交互に並ぶ鮮やかな横縞模様を持つ横斑プリマスロックです。成鳥のこの模様は非常に特徴的であり、一部ではその外見から「ゼブラ」という通称で呼ばれることもあります。生まれたばかりのひよこの時は全身が黒っぽい羽毛に覆われていますが、成長するにつれてこの美しい縞模様が現れてきます。

この品種は1874年にアメリカで正式に品種として公認されました。日本へは明治時代にあたる1886年に初めて輸入され、以来国内でも飼育されてきました。その長い歴史から、現在では日本農林規格において、明治時代以前に導入され定着した品種として、日本在来種に準じる扱いを受けています。

導入当初は卵も肉も利用できる兼用種として飼育されていましたが、時代と共に用途が変化し、現在では主に肉用鶏として利用されています。また、横斑プリマスロックは、日本各地で開発されている地鶏や銘柄鶏の元親としても重要な役割を果たしています。例えば、青森県で開発された青森シャモロックや、鹿児島県の黒さつま鶏などは、この横斑プリマスロックの系統が交配に用いられています。

白色プリマスロック

白色プリマスロック（White Plymouth Rock）は、横斑プリマスロックの中から突如として現れた、羽毛が白い突然変異個体を選抜、改良して確立された系統です。1888年にアメリカで公認され、独立した品種として扱われるようになりました。近年では単に「ホワイトロック（White Rock）」と呼ばれることも多くなっています。

この白色プリマスロックは、特に肉用鶏としての適性が高く評価されており、現代の商業的な肉用鶏生産において極めて重要な品種です。特に、世界的に主流となっている肉用鶏であるブロイラーの生産においては、白色プリマスロックの雌親系統が広く用いられています。これは、白色の羽毛を持つ鶏は処理後の皮膚に色の痕が残りにくく、商品としての見栄えが良いことも理由の一つです。

日本においても、白色プリマスロックはブロイラー生産の基盤となっている他、地鶏の開発にも利用されています。例えば、鹿児島県で生産されている地鶏であるさつま若しゃもなどは、この白色プリマスロックが交配親として使われています。

交配種とその多様性

プリマスロック、特に白色プリマスロックは、他の品種との交配によって優れた特性を持つ新たな鶏を生み出すための親系統としても非常に重要です。

ブロイラーの主流: 現在世界中で最も多く生産されているブロイラーは、白色プリマスロックの雌鶏と白色コーニッシュ種の雄鶏を掛け合わせた一代交配種です。この組み合わせは、肉質、成長速度、飼料効率などが非常に優れているため、広く採用されています。
ロックホーン: 横斑プリマスロックと白色レグホーン種を交配したものは「ロックホーン」と呼ばれます。レグホーンの高い産卵能力とプリマスロックの肉質・体格を兼ね備えることを期待して作出されます。
* ゴールデンネック: ロードアイランドレッド種の雄と横斑プリマスロック種の雌を交配させた場合、その雌から生まれるひよこは「ゴールデンネック」と呼ばれます。このひよこは全体的に黒っぽい羽毛の中に、顔の一部などがこげ茶色の特徴的な色合いを持ちます。成鳥になると全身が黒色を基調としながらも、首回りや胸部の一部に黄褐色の羽毛が現れるという独特の羽色パターンを示します。

プリマスロックは、その優れた能力と多様な系統を通じて、世界の養鶏産業、特に肉用鶏生産と地鶏開発において、現在も中心的な役割を担っている品種と言えます。

もう一度検索