プリンス・ウィリアム・カップ

プリンス・ウィリアム・カップ

プリンス・ウィリアム・カップ（Prince William Cup）は、ラグビーユニオンにおいてウェールズ代表と南アフリカ共和国代表が対戦する際に、勝者に授与される栄誉あるトロフィーです。このカップは、ウェールズラグビー協会の創設100周年という節目を記念して、2007年に制定されました。

創設と概要

このトロフィーは、当時ウェールズラグビー協会の副王室後援者であったプリンス・オブ・ウェールズ、すなわちウィリアム王子の名を冠しています。創設後初めてトロフィーが授与されたのは、2007年11月24日にウェールズの首都カーディフにあるミレニアム・スタジアムで行われた記念すべき対戦でした。この試合では南アフリカ共和国代表がウェールズ代表を34対12で破り、歴史上初めての勝者となりました。トロフィーは、その南アフリカ代表チームに対し、ウィリアム王子自身の手によって手渡されました。

以降、両国は夏季および秋季のテストマッチ期間中に、このカップをかけて対戦するのが通例となっています。具体的には、北半球の夏季にウェールズが南半球へ遠征して行う「サマーテスト」や、南半球の春に南アフリカ共和国が北半球へ遠征して行う「オータム・インターナショナル」の一環として実施されます。ただし、ラグビーワールドカップが開催される年など、国際試合の日程調整によっては対戦が実施されない場合もあります。

トロフィーについて

勝者に手渡されるプリンス・ウィリアム・カップのトロフィーは、そのデザインも特徴的です。高さは55センチメートル、厚さは1.5ミリメートルの縦長の円錐形をしています。素材は上質な銀製で、表面には23カラット（純度95.8%）の金メッキが惜しみなく施されており、その輝きは勝利の栄光を称えるにふさわしい荘厳さを放っています。

名称に関する議論

しかし、このトロフィーの名称をウィリアム王子の名にちなんで決定したことは、ウェールズ国内で少なくない議論と論争を巻き起こしました。特に、ウェールズ代表の伝説的な選手であり、広く国民に愛されながらも2007年10月31日に急逝したレイ・グラヴェル氏に敬意を表し、彼の名を冠するべきだという声が反対派から強く上がったのです。

地元の週刊新聞紙であるカンブリアン・ニュースも、グラヴェル氏の多大な功績を称え、カップの名称変更を求める論調を展開しました。この問題は、11月6日にはウェールズ国民議会でも取り上げられ、議論の対象となりましたが、当時のウェールズ政府はこれに対して具体的な見解や責任を示すことはありませんでした。

レイ・グラヴェル氏の葬儀は11月15日にカーディフのミレニアム・スタジアムで執り行われ、ウェールズ首相を含む多くの人々が参列し、彼がウェールズ社会に与えた影響力の大きさを改めて示すこととなりました。そのわずか9日後の11月24日、同じミレニアム・スタジアムでプリンス・ウィリアム・カップの初回マッチが行われ、ウィリアム王子自身が最初の勝者である南アフリカチームにトロフィーを授与するという出来事が起こりました。この一連の流れは、トロフィーの名称を巡る議論に複雑な影を落とすこととなりましたが、結果として名称が変更されることはありませんでした。

対戦成績

2024年11月24日現在までの、プリンス・ウィリアム・カップをかけたウェールズ代表対南アフリカ共和国代表の対戦成績は以下の通りです。

優勝回数:
南アフリカ共和国: 12回
* ウェールズ: 4回

この成績は、南アフリカ共和国代表がこのカップ戦において優位を保っていることを示しています。

プリンス・ウィリアム・カップは、ウェールズラグビーの歴史的な節目に誕生し、両国間のラグビーにおける重要な定期戦として、その歴史を刻み続けています。

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