プリンス・バスター

プリンス・バスター（本名：セシル・ブスタメンテ・キャンベル）は、ジャマイカのスカ、ロックステディ、レゲエの先駆者として知られる伝説的な音楽家です。1938年にキングストンで生まれ、2016年にその生涯を閉じるまで、歌手、プロデューサー、サウンドシステムオーナーとして多大な功績を残しました。彼の音楽は、ジャマイカの音楽シーンだけでなく、世界中の音楽ファンに影響を与え続けています。

幼少期はキングストンのオレンジ・ストリートで過ごし、アメリカのリズム・アンド・ブルースに夢中になりました。ギャングから巻き上げられた金を取り返そうとする勇敢な姿がコクソン・ドッドの目に留まり、サウンドシステムのボディーガードとしてスカウトされたことが、音楽キャリアの始まりでした。元ボクサーとしての腕力に加え、音楽的な才能も持ち合わせていたバスターは、すぐにその才能を開花させます。宿敵デューク・リードの選曲をいち早く察知し、コクソンのサウンドシステムを成功に導きました。

1959年には独立し、自身のサウンドシステム「プリンス・バスター・ボイス・オブ・ザ・ピープル・サウンドシステム」を設立。同時にレーベルも立ち上げ、モンティ・モリスやデリク・モーガンなどの才能あるアーティストを世に送り出しました。初期のレーベルはWILD BELLSといい、モンティの「Humpty Dumpty」や「Money Can't Buy Love」などのヒットを記録しました。また、イギリス人プロデューサー、エミル・シャロットとの出会いをきっかけに、ブルー・ビート、ファブ、ダイスといったレーベルを設立し、600曲以上もの楽曲をリリースしました。

1964年にモハメド・アリと出会ったことがきっかけで、イスラム教に改宗。音楽活動にも影響を与え、平和を願うメッセージを込めた楽曲を制作しました。

1960年代には、「ワン・ステップ・ビヨンド」「アル・カポネ」「十戒」など、数多くのスカの名曲をプロデュース。コクソン、デューク・リードらと並び、スカ・ミュージックの隆盛に大きく貢献しました。ロックステディ〜アーリー・レゲエ期にも、「ジャッジ・ドレッド・ロックステディ」など、語りを取り入れた作品を発表し、新たな音楽の可能性を追求しました。レゲエ期には、ジョン・ホルト、デニス・アルカポーン、ビッグ・ユースらをプロデュースしましたが、1972年に銃撃戦の激化や歌詞の劣化に嫌気がさし、一時的に音楽シーンから距離を置きました。

1980年代に入ると、イギリスでスカ、ロックステディ、レゲエを愛好する2トーン・ブームが起こり、プリンス・バスターの音楽が再評価されます。スペシャルズ、マッドネス、ザ・ビート、セレクターなどのバンドが彼の音楽に影響を受けました。バスター自身もギャズ・メイオールらのバンドと共演するなど、積極的に活動を行いました。

1989年にはスカタライツと共に初来日。スカ・フレームスとのライブも実現させました。1993年には、シャギーによる”Carolina”のカバーが世界的なヒットとなり、著作権侵害で訴えられるというトラブルに見舞われましたが、その後も音楽活動を続けました。2003年には、日本のスカ・バンド、デタミネーションズと3度目の来日公演を行い、往年の名曲を披露しました。

晩年は3度の発作に見舞われ、心臓疾患により2016年に亡くなりましたが、彼の音楽は今もなお、世界中の音楽ファンに愛され続けています。プリンス・バスターは、ジャマイカ音楽の発展に大きく貢献しただけでなく、音楽を通じて平和を訴え続けた偉大な音楽家でした。

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