コクソン・ドッド

クレメント・"サー・コクソン"・ドッド：ジャマイカ音楽のパイオニア

クレメント・“サー・コクソン”・ドッド（Clement "Sir Coxsone" Dodd、1932年1月26日 - 2004年5月5日）は、ジャマイカ・キングストン出身の音楽プロデューサーであり、本名はクレメント・シーモア・ドッドです。彼は、1950年代から1960年代にかけてのレゲエをはじめとするジャマイカ音楽の発展において、最も重要な人物の一人として知られています。「コクソン」というニックネームは、1940年代に活躍したヨークシャーの有名なクリケット選手に由来し、ドッド自身も若い頃にクリケットの才能を発揮していたことから名付けられました。

サウンドシステムの隆盛

ドッドは、両親が経営する店で客のためにレコードをかけることから音楽キャリアをスタートさせました。1954年には、スピーカーセットを屋外に持ち出し、「サー・コクソン・ザ・ダウンビート」と名付けたサウンドシステムを開業しました。当初はアメリカ産のジャズやR&Bを流していましたが、マイアミやニューオーリンズへ頻繁に足を運び、最新のレコードを買い集めました。サウンドシステム間の競争が激化する中で、ドッドは成功を収め、最盛期には5つのサウンドシステムを所有し、プリンス・バスター、U・ロイ、リー・ペリーなどの才能ある若手を起用して、毎晩レコードをかけさせました。

スタジオ・ワンの誕生

アメリカでのR&Bブームが終焉を迎えると、コクソン・ドッドはジャマイカで独自の音楽を創造し始めました。当初はサウンドシステムのためだけに録音を行っていましたが、その活動は急速に音楽産業へと発展していきます。1959年、彼はワールド・ディスクというレコード会社を設立し、1961年にはキングストン市のブレントフォード・ロードにある自宅の酒屋を改造してスタジオを建設しました。そして、ザ・スカタライツを結成し、レコーディングを開始しました。1963年には、このスタジオを「スタジオ・ワン」と名付けました。これは、ジャマイカ初の黒人所有のスタジオでした。

ドッドは、新しい才能の発掘にも力を入れ、毎週日曜日の夜にオーディションを開催していました。そこで、ザ・ウェイラーズの一員として歌っていたボブ・マーリーを見出します。ドッドは、ザ・ウェイラーズとレコーディングされた歌1曲あたり20ポンドの5年契約を結びました。1964年2月、スタジオ・ワンで録音されたウェイラーズの「シマー・ダウン」は、ジャマイカでナンバーワンヒットを記録しました。

ロックステディの時代と才能の開花

1960年代後半から1970年代初頭にかけて、スタジオ・ワンのサウンドはロックステディと同義となりました。そして彼は、ジャマイカの音楽的才能を数多く惹きつけました。バーニング・スピア、デルロイ・ウィルソン、ホレス・アンディ、シュガー・マイノット、ボブ・アンディ、ヘプトーンズなど、数多くのレゲエアーティストと共に作品を制作しました。その後も、ドッドは積極的に音楽ビジネスに携わり、2004年5月1日には、彼のプロデューサーとしての功績を称え、スタジオ・ワンの所在地であるブレントフォード・ロードが「スタジオ・ワン大通り」と改名されました。しかし、そのわずか4日後の5月5日、コクソン・ドッドは心臓発作により急逝しました。

クレメント・“サー・コクソン”・ドッドの音楽への情熱と革新的な取り組みは、ジャマイカ音楽の発展に多大な貢献をしました。彼の遺産は、今日においても多くの音楽ファンやアーティストに影響を与え続けています。

外部リンク: Article on working with Bob Marley
外部リンク: Guardian, UK Obituary

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