プルームテクトニクス

プルームテクトニクスとは

プルームテクトニクスは、1990年代以降に提唱された地球物理学の新しい学説です。この理論は、地球内部のマントルにおける大規模な対流運動である「プルーム」に着目し、地球全体の変動を説明しようとするものです。

プレートテクトニクスとの違い

従来のプレートテクトニクス理論は、地球表面を覆うプレートの動きを扱いますが、プルームテクトニクスは、深さ2,900kmに達するマントル全体の動きを対象とします。プレートテクトニクスでは説明できなかった、大陸の形成や分裂、生物の大量絶滅といった地球規模の現象を、マントルのダイナミックな動きによって説明することを試みます。

プルームとは

プルームとは、マントル内部で発生する筒状の上下の流れのことです。マントルは、地球の深さ数十kmから約2,900kmまでの範囲に広がっており、この中を下降する「コールドプルーム」と上昇する「ホットプルーム」が存在します。

コールドプルーム:
周辺のマントルよりも温度が低く、マントル表層から中心部へ向かって下降するプルームです。これは、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際に発生します。沈み込んだプレートは、深さ670km付近で一旦停滞した後、さらに深部へと沈降します。複数の下降流が合わさると、巨大な「スーパーコールドプルーム」となり、周辺のプレートを引き寄せて超大陸を形成する原動力となります。

ホットプルーム:
マントルの最下部、核との境界付近で高温になったマントル物質が上昇するプルームです。スーパーホットプルームは、地表に達すると大規模な火山活動を引き起こし、大陸の分裂や生物の大量絶滅の原因となることもあります。

プルームテクトニクスの重要性

プルームテクトニクスは、地球の歴史を理解する上で非常に重要な概念です。この理論によって、プレートテクトニクスだけでは説明できなかった、地球内部のダイナミックな動きが、地球表面の変動や生物の進化に大きな影響を与えていることが明らかになりました。

他の分野との関連

プルームテクトニクスは、地球科学だけでなく、生物学や気候学など、様々な分野と関連しています。例えば、大陸の移動や大規模な火山活動は、地球の気候変動を引き起こし、生物の大量絶滅の原因となることもあります。これらの現象を、地球内部のダイナミックな動きと関連付けて研究が進められています。

日本におけるプルームテクトニクス

日本では、丸山茂徳氏らによって「プルームテクトニクス」という言葉が提唱され、広く認知されるようになりました。この理論は、高等学校の教科書にも掲載されており、大学入試でも出題されることがあります。しかし、海外では「プルーム仮説」と呼ばれることが多く、まだ一般的な理論とは言えない状況です。

今後の展望

プルームテクトニクスは、まだ発展途上の理論であり、今後の研究によってさらに詳しいことが明らかになるでしょう。将来の超大陸形成や、大規模な火山活動の予測など、この理論は私たちの未来を考える上でも重要な示唆を与えてくれます。

まとめ

プルームテクトニクスは、地球内部のダイナミックな動きに着目した、革新的な地球物理学の学説です。この理論は、地球の歴史、そして未来を理解する上で、欠かすことのできない重要な概念です。この理論を学ぶことで、地球という惑星のダイナミズムを感じることができるでしょう。


参考資料
丸山茂徳『46億年 地球は何をしてきたか?』岩波書店
丸山茂徳・磯﨑行雄『生命と地球の歴史』岩波書店
熊澤峰夫・丸山茂徳編『プルームテクトニクスと全地球史解読』岩波書店
* 川上紳一・東條文治『最新地球史がよくわかる本』秀和システム

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