プレシェヴォ渓谷危機

プレシェヴォ渓谷危機

プレシェヴォ渓谷危機は、1999年から2001年にかけて、ユーゴスラビア連邦共和国（当時）の一部であったセルビア共和国南部のプレシェヴォ、ブヤノヴァツ、メドヴェジャの3自治体で発生した武力衝突です。この紛争は、「プレシェヴォ・メドヴェジャ・ブヤノヴァツ解放軍」（UÇPMB）と名乗るアルバニア人武装勢力が、ユーゴスラビアの治安部隊と衝突したことに端を発します。

背景

1999年のコソボ紛争後、コソボとユーゴスラビア連邦共和国の国境付近に、幅5キロメートルの地上安全地帯（GSZ）が設けられました。この地帯では、ユーゴスラビア連邦軍のパトロールが禁止され、軽武装の警察部隊のみが治安維持を担当することになりました。GSZには、アルバニア人が多数を占めるブヤノヴァツ自治体のドブロシン村も含まれていました。

プレシェヴォ・メドヴェジャ・ブヤノヴァツ解放軍

コソボ紛争後に武装解除されたコソボ解放軍をモデルに、新たな武装ゲリラが結成されました。GSZは、セルビア側からの報復を比較的受けにくい地域であり、ゲリラはここを拠点として活動しました。彼らの目的は、プレシェヴォ、ブヤノヴァツ、メドヴェジャの支配権を確立し、コソボやマケドニアのアルバニア人地域と統合することでした。

衝突

1999年6月21日から2000年11月12日までの間に、294件の攻撃が記録されました。このうち、246件はブヤノヴァツ、44件はメドヴェジャ、6件はプレシェヴォで発生しました。これらの攻撃により、14人が死亡（民間人6人、警官8人）、37人が負傷（国連職員2人、市民3人、警官34人）、5人の民間人が拉致されました。「解放軍」は、アサルトライフル、機関銃、迫撃砲、RPG、手榴弾、対戦車地雷、対人地雷などを使用しました。

2000年11月23日には、セルビアの警官4人が民兵との戦闘で死亡し、2001年2月18日には、セルビア人3人が対戦車地雷で死亡しました。同日、警察が被害車両を調査中に迫撃砲や対人火器による攻撃を受け、警察側も反撃しました。ブヤノヴァツの広報によると、この戦闘でアルバニア人勢力に負傷者が出たと見られています。

国際的なメディアの関心が薄れる中、ゲリラの活動の中心はマケドニアに移りました。マケドニアでは、「解放軍」と関連があると見られる民族解放軍が、政府に対して反乱を起こし、マケドニア紛争へと発展していました。

2001年5月15日、ユーゴスラビアは、GSZ外にあるUÇPMBの最後の拠点であるオラオヴィツァを攻撃しました。この作戦には、ユーゴスラビア連邦軍とセルビア警察特殊部隊が参加しました。ユーゴスラビア軍は、包囲作戦を展開し、小規模なアルバニア人民兵組織は、重武装したユーゴスラビア軍とセルビア軍の精鋭部隊には対抗できず、翌日降伏しました。

ユーゴスラビア当局は、死者は反乱側のみで14人から20人程度と発表しましたが、UÇPMBは5人であったと反論しました。村の住民の多くは、コソボやマケドニアへと避難し、その際、脱出経路は開放されました。その後、45人のアルバニア人ゲリラが、KFORに投降しました。

事態を統制不能と判断したNATOは、5月24日にユーゴスラビア連邦軍のGSZへの再進駐を認め、同時にUÇPMBにはKFORへの投降を呼びかけました。KFORは、武器を回収し、メンバーを記録した後、彼らを釈放しました。

衝突の余波

オラオヴィツァでの戦闘を指揮したセルビアの将軍、ニノスラヴ・クルスティッチとゴラン・ラドサヴリェヴィッチは、NATOから賞を受けました。紛争後、地域は平穏を取り戻し、2006年にはアルバニア人の政党が10年にわたるボイコットを終え、セルビアの政界に復帰しました。

関連項目

マケドニア紛争
コソボ暴動

外部リンク

* BBC News - Presevo valley tension

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