プレシェヴォ

プレシェヴォ：セルビア南端の町

プレシェヴォ（アルバニア語: Preshevë / Presheva）は、セルビアのプチニャ郡に位置する町であり、それを中心とした基礎自治体です。セルビアの最南端に位置し、南は北マケドニア、西はコソボと国境を接しています。この地域は、歴史的、政治的、そして民族的な背景から、複雑な様相を呈しています。

地理と人口

プレシェヴォ自治体は、2002年の国勢調査によると34,904人の人口を擁しています。特徴的なのは、その民族構成です。自治体人口の約90%をアルバニア人が占めており、コソボを含めないセルビアにおいては、最もアルバニア人の人口比率が高い地域となっています。残りの人口は主にセルビア人で、セルビア語のトルラク方言を話します。

集落ごとの民族構成を見ると、プレシェヴォ自治体に含まれるほとんどの集落でアルバニア人が多数派を占めています。しかし、リャニク、スヴィニシュテ、スラヴイェヴァツ、ツァカノヴァツといった集落では、セルビア人が多数派となっています。また、ブシュトラニェ、ゴレミ・ドル、レリャン、ストレゾヴツェ、トルナヴァ、チュカルカ、そしてプレシェヴォの町など、セルビア人が少数ながらも一定の人口比率を占める集落も存在します。

興味深いことに、これらの集落の多くでは、20〜40年ほど前まではセルビア人が多数派でした。しかし、セルビア人の域外への移住と、アルバニア人が移住者の住居を買い取って移り住むという現象が起こり、人口構成が変化しました。

政治と紛争

プレシェヴォは、過去に紛争の舞台となりました。1992年には、地域のアルバニア人がプレシェヴォ、メドヴェジャ、ブヤノヴァツをコソボに編入することを問う住民投票を行いました。1999年から2001年にかけては、「プレシェヴォ・メドヴェジャ・ブヤノヴァツ解放軍」（UÇPMB）というアルバニア人の武装勢力が、この3自治体のセルビアからの分離と、将来的な独立したコソボへの統合を求めて武力闘争を展開しました。これは「プレシェヴォ渓谷危機」と呼ばれています。

この紛争は、コソボ紛争や北マケドニア紛争ほど国際社会の注目を集めませんでしたが、ユーゴスラビアおよびセルビアの部隊によって鎮圧されました。地域は一応の正常化を見せていますが、民族間の緊張は依然として残っています。

2005年12月には、アルバニア人民主党（PDSh）のラグミ・ムスタファが市長に選出されました。6ヶ月後に行われた再投票でも、ムスタファが再び市長に当選しています。2009年からは、民主行動党（PVD）のナデル・サリクが市長を務めています。

劣化ウラン弾の影響

プレシェヴォ近郊のレリャンでは、合計161発の劣化ウラン弾が発見されています。セルビア政府は、レリャンでの劣化ウラン弾の除去作戦に35万ユーロを拠出しています。このことは、紛争の遺産が地域に与える影響を示しています。

現在の状況

プレシェヴォは、セルビア国内におけるアルバニア人コミュニティの中心地としての役割を担っています。しかし、過去の紛争や民族間の緊張は、依然としてこの地域に影を落としています。今後のプレシェヴォが、民族間の相互理解を深め、安定した発展を遂げることができるかどうかが注目されます。

プレシェヴォ渓谷危機は、周辺地域と同様に、民族間の緊張と政治的な不安定さが複雑に絡み合った紛争でした。この地域の歴史を理解することは、バルカン半島の平和と安定を考える上で重要です。

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