プレスコット (オンタリオ州)

カナダの古都、プレスコット：セントローレンス川に沿う歴史と交易の町

オンタリオ州南西部に位置するプレスコットは、単一層自治体の町です。リーズ・グレンビル連合郡に地理的には属しますが、行政的には独立しています。アメリカ合衆国との国境であるセントローレンス川には、オグデンバーグ・プレスコット国際橋が架かり、国境を越えるアクセスも容易です。

古代の居住地から軍事拠点へ

欧州人が入植する以前は、セントローレンス・イロコイ族が暮らしていました。17世紀末からフランス人の入植が始まり、フォート・フロンテナック（現キングストン）への前哨地として、幾つかの砦が築かれました。フレンチ・インディアン戦争では戦場となり、当時の砦は現在水中に沈んでいます。その後、アメリカ独立戦争では、ロイヤリストたちがこの地に移住し、イギリス軍の防衛に貢献しました。

1810年、この地域はロバート・プレスコット将軍にちなんで命名されました。1812年の米英戦争では、アメリカ軍がオグデンバーグに、イギリス軍がプレスコットに拠点を構え、激戦が繰り広げられました。特に、フォート・エリントンは重要な軍事拠点として機能し、1838年のアッパー・カナダ蜂起の際にも使用されました。

港町としての繁栄と交通の要衝

プレスコットの港は、セントローレンス川と五大湖を結ぶ重要な海運拠点として栄えました。モントリオールから五大湖への交易の中継地として繁栄した時期もありましたが、航海技術の進歩によってモントリオールから五大湖への直航路が開かれると、その役割は変化していきます。

19世紀には鉄道の時代を迎え、バイタウン（現オタワ）とを結ぶバイタウン・プレスコット鉄道が開通しました。その後、グランド・トランク鉄道（カナディアン・ナショナル鉄道の前身）も開通し、トロントとモントリオールを結ぶ鉄道網と接続する要衝となりました。さらに、対岸のオグデンバーグとは鉄道連絡船で結ばれ、活気ある交易拠点として機能していました。しかし、1930年代の世界恐慌や第二次世界大戦、そして交通手段の変化を経て、オグデンバーグへのフェリー輸送は1970年代に完全に廃止されました。

現在

歴史的な建造物が残り、豊かな自然に囲まれたプレスコットは、現在も魅力的な観光地として知られています。セントローレンス川沿いの美しい景色や、歴史的な建造物を巡る観光は、訪れる人々を魅了し続けています。かつての交易の盛衰、戦争の跡、そして交通手段の変化といった歴史を肌で感じることができる町として、プレスコットは静かにその歴史を物語っています。

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