プレゼンス (レッド・ツェッペリンのアルバム)

レッド・ツェッペリン『プレゼンス』：苦難が生んだ異色の存在感

『プレゼンス』は、レッド・ツェッペリンが1976年に発表した7枚目のスタジオアルバム。バンドの絶頂期にレコーディングされた本作は、メンバーを襲った相次ぐ困難と、それによって生まれた独特の緊張感が色濃く反映された作品として知られています。

制作の背景：苦難の連続

1975年、レッド・ツェッペリンは北米ツアーを成功させ、『フィジカル・グラフィティ』も大ヒット。しかし、その裏ではトラブルが続出していました。ジミー・ペイジの負傷、ロバート・プラントのインフルエンザ、チケットを巡るファンの暴動など、バンドは困難に直面します。さらに、税金対策のためにメンバーは国外での生活を余儀なくされます。

新たなアメリカツアーを前に、プラント一家が交通事故に遭い、プラント自身も重傷を負います。満足に動けない状況の中、バンドは新作の制作を開始せざるを得ませんでした。

逼迫したレコーディング

レコーディングはドイツのスタジオで行われましたが、ローリング・ストーンズの予約が入っていたため、実質3週間という限られた時間しかありませんでした。メンバーは家族と離れ、プラントはまだギプスを装着しているという状況。しかし、この逼迫した状況が、バンドの集中力を高め、1日18時間から20時間にも及ぶハードワークをこなす原動力となりました。

通常であれば発売延期もできた状況で、短期間での制作を強行した理由について、ペイジは「ブランクを空けた分だけ、次のレコードが間延びしたムードになりそうだった」と語っています。この切迫感が、アルバムに独特の緊張感を与えたと言えるでしょう。

サウンドの特徴：剥き出しのバンドサウンド

『プレゼンス』は、エレキギター、ベース、ドラムス以外の楽器がほとんど使われていない、非常に硬質なサウンドが特徴です。キーボードは一切使用されていません。ペイジによれば、他のメンバーからのアイデアが少なく、ほとんどが自分の肩にかかっていたため、このようなサウンドになったとのことです。

アートワークとタイトル

ジャケットデザインは、ヒプノシスが担当。「バンドのパワーと存在感」をテーマに、日常的な風景の中に異質な物体「オベリスク」を配置した、印象的なデザインとなっています。当初、アルバムタイトルは『Obelisk』となる予定でしたが、最終的に『プレゼンス』という言葉が選ばれました。

評価と影響

『プレゼンス』は、全スタジオアルバムの中で最も売り上げが少ない作品ですが、批評家からの評価は決して低くありません。ローリング・ストーン誌は「ヘヴィメタルの世界チャンピオンである事をあらためて思い知らせてくれる」と賞賛し、渋谷陽一も最高傑作に挙げています。

特に「アキレス最後の戦い」は高い評価を受け、バンドの代表作の一つとなりました。山崎洋一郎は、この曲を「ロックというものを物質化して見せてくれと言われても無理だが、このアルバムはそれに限りなく近いことをやっている」と絶賛しています。

しかし、本作からは「アキレス最後の戦い」と「俺の罪」以外の曲は、コンサートでほとんど演奏されませんでした。

まとめ

『プレゼンス』は、レッド・ツェッペリンの作品の中でも異色の存在と言えるでしょう。バンドを襲った苦難と、それによって生まれた創造性が凝縮された本作は、彼らの音楽の新たな一面を垣間見ることができる、貴重なアルバムです。

収録曲

1. アキレス最後の戦い - Achilles Last Stand
2. フォー・ユア・ライフ - For Your Life
3. ロイヤル・オルレアン - Royal Orleans
4. 俺の罪 - Nobody's Fault but Mine
5. キャンディ・ストア・ロック - Candy Store Rock
6. 何処へ - Hots On for Nowhere
7. 一人でお茶を - Tea for One

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