プログレスM-03M

プログレスM-03M

プログレスM-03M（Progress M-03M）は、ロシア連邦宇宙局が開発・運用する無人宇宙補給船「プログレス」シリーズの一つです。国際宇宙ステーション（ISS）へ、クルーの生活に必要な物資や、ステーションの運用・維持に欠かせない燃料などを輸送することを主任務としています。プログレスM-03Mは、改良型の「プログレスM」の中でも特に、バージョン11F615A60に属し、機体固有のシリアル番号は403が付与されています。また、アメリカ航空宇宙局（NASA）からは「プログレス35」（略称: 35P）という識別名で呼ばれています。

打ち上げとISSへの到達

この重要な輸送任務を開始するため、プログレスM-03Mを搭載したソユーズ-Uロケットは、カザフスタン共和国に位置する広大なバイコヌール宇宙基地から打ち上げられました。具体的には、人類初の有人宇宙飛行を成し遂げたユーリ・ガガーリンにちなんで名付けられた「ガガーリン発射台」（LC-1/5）から、2009年10月15日1時14分（協定世界時UTC）に力強く宇宙へと旅立ちました。打ち上げから軌道投入、そしてISSへの自動航行は極めて順調に進み、約3日後の同年10月18日1時40分（UTC）には、目的地である国際宇宙ステーションへ無事到着。ISSのロシア区画モジュールの一つであるピアースモジュールに、自動誘導システムを用いて正確にドッキング（結合）することに成功しました。

物資の補給

ISSに到着したプログレスM-03Mの最大の役割は、搭載してきた物資をISSクルーに引き渡すことでした。その積載量は合計2,392kgに及び、多岐にわたる品目が含まれていました。内訳としては、クルーの食料、衣類、衛生用品、実験装置、スペアパーツといった「ドライカーゴ」が790kg。ISS自身の軌道を維持したり、姿勢を制御したりするために必要な「燃料」が870kg。そして、クルーの飲用や衛生、酸素生成などに使用される「水」が420kgが補給されました。これらの物資は、ISSにおける長期滞在や科学活動を持続可能にする上で不可欠であり、プログレス補給船は生命線とも言える存在です。

運用後期と処分

ISSに約半年間結合し、補給船としての役割を終えたプログレスM-03Mは、今度はISSで発生した不要になった機器や、クルーが出したゴミなどを積み込みました。そして、2010年4月22日、ピアースモジュールから分離し、ISSの近傍を離れました。通常、補給任務を終えたプログレス補給船は、大気圏に再突入して処分されますが、プログレスM-03Mは分離後も数日間、軌道上にとどまるという特別な運用が行われました。同年4月27日まで、この機体は複数の科学実験を行うためのプラットフォームとして利用されたのです。一連の実験を終え、全ての任務が完了した後、プログレスM-03Mは同年4月27日18時7分（UTC）に計画通り軌道からの離脱を開始しました。その後、制御された精密な軌道計算に基づき、地上の船舶などに危険が及ばない太平洋上空の広大な無人エリアで大気圏に再突入させられ、その機体は燃え尽きる形で安全に処分されました。

プログレスM-03Mの成功裏の飛行は、国際宇宙ステーションの安定的かつ持続的な運用を支える上で、ロシアのプログレス補給船が担う重要な役割と、その高い信頼性を改めて示す事例となりました。

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