プログレスM-15M

プログレスM-15M

プログレスM-15Mは、ロシア連邦宇宙局によって運用された無人宇宙補給船です。国際宇宙ステーション（ISS）への重要な物資輸送任務のため、2012年に打ち上げられました。国際的にはプログレス47または47Pとしても識別され、ロシアが開発したプログレス-M型補給船の15番目の機体にあたります。

打ち上げとISSへの到達

この補給船は、2012年4月20日にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地からソユーズ-Uロケットに搭載されて打ち上げられました。順調に軌道へ投入された後、ISSへ向かう飛行を開始しました。軌道修正のための複数回の制御噴射を経て、打ち上げから約2日後の4月22日、ISSのピアースモジュール下部ポートへの自動ドッキングに成功しました。このドッキングは、既存のクルスシステムを用いて自動操縦で行われました。

ISS滞在中の活動と新型システム試験

プログレスM-15Mは約3ヶ月間にわたりISSにドッキングした状態で運用されました。この間、ISSで活動する第30次長期滞在クルーが必要とする食料、水、酸素、機器類といった物資が運び込まれるとともに、ステーション内で発生した不用品が搭載されました。

これらの定期的な補給任務に加え、プログレスM-15Mには重要な技術実証ミッションが課されていました。それは、改良型の自動ランデブー・ドッキングシステムであるクルス-NAの軌道上試験です。クルス-NAシステムは、従来型のクルス-Aシステムに比べて電力消費が少なく、将来的な設計変更ではアンテナ数を大幅に削減（従来の5基から1基へ）することが可能とされていました。これにより、アンテナ展開や収納といった複雑な手順に伴う潜在的なリスクを低減することが期待されていました。初回のISSへのドッキングは、安全確保のため実績のあるクルス-Aシステムで行われましたが、滞在期間中にクルス-NAの性能が軌道上で評価されることになったのです。

クルス-NA試験中の出来事と再ドッキング成功

クルス-NAシステムの性能を確かめるため、プログレスM-15Mは2012年7月22日に一度ISSからドッキングを解除しました。その後、7月24日にはクルス-NAを用いた再ドッキングが試みられましたが、システム起動時に技術的な問題が発生し、安全システムが作動したため、この再ドッキング試みは中止されました。

問題の原因として、プログレスM-15Mの機体内部温度が想定よりも低かったことが推測されました。ロシアの管制チームは、機体内の全ての暖房装置を稼働させることで温度を適切なレベルに保つ対策を講じました。日本の宇宙ステーション補給機「こうのとり3号機」のISS到着が近づいていたため、プログレスの再ドッキング試験は一時的に延期されましたが、対策が有効であることを確認した後、7月29日に改めて再ドッキングが試みられました。

この二度目の試みでは、クルス-NAシステムは正常に作動し、ISSのズヴェズダモジュールに搭載されたクルス-Pアンテナを正確に捕捉しました。プログレスM-15MはISSを周回するランデブー軌道を経て、無事に再ドッキングを完了させました。これにより、クルス-NAシステムの軌道上での機能性が実証されました。

最終段階と廃棄

改良型ドッキングシステムの試験成功を見届けたプログレスM-15Mは、2012年7月30日にISSから最終的な離脱を行いました。その後、ISS周辺を離れ、二つの軌道上実験を実施しました。8月6日から8月14日にかけてKhlopushka実験、8月15日から8月20日にかけてレーダープログレス実験が行われました。これらの科学実験が完了した後、プログレスM-15Mは地球の大気圏へ再突入するための軌道変更を行いました。機体は太平洋上の、あらかじめ定められた安全な海域に落下し、その長距離にわたる宇宙での任務を終えました。

輸送物資の詳細

プログレスM-15MがISSへ運んだ貨物は多岐にわたりました。ドライカーゴとして、ISSでの生活や研究に必要な装置類、宇宙飛行士用の食料、衣類、生命維持関連機器など、約1230kgが搭載されていました。また、ISSの姿勢制御や軌道維持に必要な補充用燃料が約900kg、生活用水として約420kg、そして呼吸用の酸素などの気体が約50kg積み込まれていました。特筆すべき積荷としては、ISSに滞在していたロシア人宇宙飛行士、ゲンナジー・パダルカ氏の誕生日を祝うための個人的なプレゼントも含まれていました。

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