プログレスM-9

プログレスM-9

プログレスM-9は、ソビエト連邦によって開発・運用されたプログレス補給船の一機です。1991年、軌道上のミール宇宙ステーションへ必要不可欠な物資を届ける使命を帯びて打ち上げられました。ミールへの補給任務に就いたプログレス補給船としては通算で64機目にあたり、そのうちプログレス-M型の27番機に相当します。この機体は、プログレス-M 11F615A55型という改良型に分類され、固有のシリアル番号は210番が付与されていました。

搭載貨物

プログレスM-9は、ミール宇宙ステーションに滞在するクルー、特に第9次長期滞在の宇宙飛行士たちの生命維持と活動を支えるための多様な貨物を積載していました。

食料、水、酸素といった生存に必要な物資
宇宙空間での科学実験に使用する装置や試料
ミール宇宙ステーションの軌道を維持・調整するための推進剤

さらに特筆すべき点として、このプログレスM-9にはVBKラドゥガと呼ばれる小型カプセルが搭載されていました。これは、宇宙ステーションで生成された実験試料や、不要となった物品などを地球へ安全に持ち帰るための回収システムです。プログレス補給船がVBKラドゥガを搭載して打ち上げられたのは、このM-9が3機目でした。

運用

プログレスM-9のミッションは、1991年8月20日協定世界時（GMT）22時54分10秒に始まりました。カザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地の1/5番発射台から、信頼性の高いソユーズ-U2ロケットに搭載されて宇宙へと旅立ちました。

打ち上げから約2日間の飛行を経て、プログレスM-9は1991年8月23日GMT 0時54分17秒に、ミール宇宙ステーションのコアモジュール前方にあるドッキングポートへ無事自動ドッキングを果たしました。これにより、搭載していた物資の移送や、ステーションの軌道制御が可能となりました。

プログレスM-9がミールと結合していた期間は約38日間でした。この間、ミール宇宙ステーションは地球上空379キロメートルから396キロメートルの範囲で軌道を周回しており、その軌道傾斜角は51.6度でした。プログレスM-9の推進システムは、この期間中のミール軌道維持や微調整に貢献しました。

ドッキング任務を終えたプログレスM-9は、1991年9月30日GMT 1時53分0秒にミールから分離しました。その後、宇宙空間を飛行し、分離から約6時間後のGMT 7時45分頃、太平洋上空で大気圏に再突入し、その大部分は燃え尽きて消滅しました。

しかし、搭載されていたVBKラドゥガカプセルは、大気圏再突入の過酷な環境に耐える設計になっており、分離後も単独で地球への帰還軌道に乗りました。カプセルは同日GMT 8時16分24秒に、現在のカザフスタン共和国領内（当時はカザフ・ソビエト社会主義共和国）の予定された地点に着陸し、貴重な試料などが回収されました。

プログレスM-9は、ミールへの定期的な物資輸送という重要な役割を遂行し、宇宙ステーションの長期運用を支える上で不可欠な存在でした。そのミッションは、当時のソビエト連邦による宇宙開発活動の一環として、宇宙ステーション技術の確立と維持に貢献しました。

関連事項

1991年の宇宙飛行
* ミールへの無人宇宙飛行の一覧

※リンクは概念的なものであり、実際には参照可能なURLを別途定義する必要があります。

もう一度検索