プロジェクト鳩

プロジェクト鳩（プロジェクトオルコン）

プロジェクト鳩とは、第二次世界大戦中にアメリカの行動主義心理学者であるB.F.スキナーによって実施されたミサイル誘導実験のことを指します。このプロジェクトは後に「プロジェクトオルコン」と改名され、オペラント条件付けの原理を利用して、小型の鳩をミサイルの誘導に活用しようとするものでした。

背景と目的

1940年代、アメリカは戦争の激烈さと新たな技術の導入に対処するため、さまざまな軍事プロジェクトを進めていました。その中で、スキナーが提案したのが鳩によるミサイル誘導のアイデアでした。鳩は前部に取り付けられたレンズを通じてターゲットを見つけ、その画像が内部のスクリーンに映し出されるという仕組みでした。この画像が中央をつつかれた場合、ミサイルは真っ直ぐに飛びますが、中心からずれた場合は、スクリーンの傾きによってミサイルの方向が制御されるという複雑なプロセスでした。

プロジェクトの展開

このユニークなアプローチに対しては賛否がありましたが、アメリカ陸軍の研究機関である国防研究委員会（NDRC）は、25,000ドル（当時の大金）を投じて研究を進める決定をしました。スキナーが描いた計画は興味深いものでしたが、実際のミサイル誘導に鳩を利用することの現実性には疑問の声もありました。結局、鳩の訓練自体はある程度成功したものの、スキナーのアイデアが本格的に実施されることはありませんでした。

1944年10月、陸軍はこのプロジェクトを中止すると発表しました。理由は、他のより現実的な研究に支障が出る可能性があるためでした。この決定は、多くの支持者がいたため波紋を呼ぶこととなります。ですが、スキナーの取り組みはその後も語り継がれ、新たな学問的興味を引き起こしました。

プロジェクトオルコンの復活

1948年になって、プロジェクトは再び海軍によって「プロジェクトオルコン」として復活しました。この時期には、電気的な誘導装置の信頼性が確認されるなど、技術の進歩が見られました。その結果、鳩による誘導というアイデアは次第に実用化の可能性が薄くなり、プロジェクトオルコンは1953年に終了しました。

結論

プロジェクト鳩は、戦争時の極端なアイデアを象徴するものであり、人間の創造性が生む奇想天外な取り組みを映し出しています。このプロジェクトは当時の科学技術の限界や、動物を兵器化するという倫理的な観点からも多くの問題を提起しましたが、アメリカの心理学的アプローチの一環として、その影響は現在の実験心理学にも残る部分があります。戦争の悲劇的な側面を伴いながらも、この実験は歴史における重要な一幕として位置づけられるでしょう。

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