プロセスモデル

プロセスモデルとは

プロセスモデルとは、何らかのプロセス（過程、工程）を表現した模型（モデル）のことです。化学工学における処理モデルのように、具体的な手順や活動を抽象化して表現します。ビジネスにおいては、企業の仕事の進め方をモデル化し、コンピュータでは処理方法をモデル化します。

ソフトウェア開発においては、ソフトウェアの設計、利用、廃棄までの一連の流れを捉え、人による作業とコンピュータによる処理の両方を含めた視点を提供します。

コレット・ローランドは、プロセスモデルを「同じ性質を持つプロセスを分類した抽象的な記述」と定義しています。個々のプロセスは、この抽象的なモデルを実体化したものと捉えることができます。プロセスモデルは、開発において繰り返し利用され、多数存在します。

プロセスモデルは、「物事をどのように行うか、あるいはどのように行うべきか」を記述したもので、プロセスの仮定や予測を立てるために利用します。その際には、時間、論理、空間的な条件を前提として設定します。

プロセスモデルの主な目的

プロセスモデルには、主に以下の3つの目的があります。

1. 記述的な目的
プロセス内で実際に何が起きるかを順序立てて記述します。
プロセスの外部からの視点によって、効率を改善するポイントを見つけます。
2. 規範的な目的
目標を達成するために、プロセスを定義し、どのように進めるべきかを示します。
規則、ガイドライン、行動パターンを通じて、プロセスの改善を促します。
3. 説明的な目的
プロセスの原理を説明します。
原理に基づいて、実行可能な選択肢を検討します。
プロセス間および満たすべき要求事項との明確な関連性を確立します。

プロセスモデルの適用

プロセスモデルは、開発プロセスにおける重要な概念を説明し、技術者や開発者に対する手引きとしても機能します。

ビジネスプロセスモデリングでは、プロセスの改善の必要性を予測したり、問題点を指摘したりするために活用されます。IT導入のきっかけにもなり、変革管理プログラムを通じて実行に移されます。技術革新が進むにつれて、ビジネスプロセスモデル（BPM）の重要性が増しており、UML、モデル駆動型アーキテクチャ、サービス指向アーキテクチャなどのサポート技術も存在します。

プロセスモデリングは、企業ビジネスアーキテクチャのプロセス側面を明らかにし、最終的にはエンタープライズアーキテクチャの構築へと繋がります。ビジネスプロセスと他の側面との関係を明確化することで、企業変革の分析と計画を支援します。例えば、企業の合併においては、両社のプロセスを詳細に把握することで冗長な部分が明確となり、合併を円滑に進めることができます。

プロセスモデルは、ビジネスプロセス・リエンジニアリングや、シックスシグマのような継続的改善活動においても重要な役割を果たします。

プロセスモデルの分類

プロセスモデルは、様々な視点から分類できます。

適用分野による分類

[Dowson1988]によれば、プロセスモデルは以下の4つの意味で使用されます。

活動指向：製品を定義するために、関連する活動をグループ化したもの。
製品指向：製品を目標レベルにまで向上させるための一連の活動。
決定指向：特定の製品定義のために必要な決定の集合。
文脈指向：製品の改良につながる一連の文脈の集合。

レベルによる分類

ローランドによれば、プロセスは以下の3つのレベルに分類できます。

戦略的プロセス：代替案を検討し、実行計画を立てます。高度な活動であり、選択肢の検討が重要です。
戦術的プロセス：計画の実行を支援します。計画の実現に近く、詳細化を行います。
実装プロセス：最も下位のプロセスで、計画を実施するための詳細を扱います。

粒度による分類

粒度とは、プロセスモデルの詳細さの度合いを指します。

粒度の粗いモデルは、意思決定に必要な概略的な情報を提供するのに適しており、顧客や経営者向けです。一方、粒度の細かいモデルは、具体的な手順や担当者間の依存関係を明らかにするため、ソフトウェア技術者やユーザーに適しています。理想的なプロセスモデルは、あらゆる粒度に対応できることが望ましいとされています。

柔軟性による分類

プロセスモデルは予測に基づいていますが、実際の状況は予測通りに進まないこともあります。そのため、状況に合わせてモデルを修正することで、モデルの価値を向上させることができます。この考え方は、Situational Method Engineeringと呼ばれます。

プロセスモデルの表現技法

ローランドは、プロセスモデルの表現技法として、「文書」、「プログラム」、「ハイパーテキスト」の3つのスタイルを挙げています。自然言語や非定型的な図が、情報システムのプロセスモデルを表現するために使われてきました。ソフトウェア工学では、より形式的なプロセスモデルが使用されます。これらの形式的なモデルは、プログラミング言語と関連付けられています。

ビジネスプロセスモデリング (BPM)

ビジネスプロセスモデリング（BPM）とは、企業のプロセスの現状と将来を表現する活動であり、現状の理解を深め、改善を生み出すことを目的としています。アナリストやマネージャーが、プロセスの効率化や品質向上を目指して行います。BPMには、ITが関わることが多く、改善されたビジネスプロセスは変革管理を通じて実行に移されます。

ビジネスプロセスモデリングは、ビジネスプロセス管理（BPM）において重要な役割を果たします。BPMでは、ビジネスプロセスモデリング表記法（BPMN）、BPEL、統一モデリング言語（UML）、Web Services Choreography Description（WS-CDL）といった標準モデリング言語が使用されます。

BPMは、エンタープライズアーキテクチャのプロセス側面を扱い、企業全体のシステムにおけるビジネスプロセスの重要性を明らかにします。企業合併においては、両社のビジネスプロセスを詳細に分析することで、業務上の重複を特定し、効率的な統合に繋げることができます。

ビジネスプロセスモデリングは、ビジネスプロセス・リエンジニアリングや、シックス・シグマのような継続的な改善手法にとっても不可欠です。

関連事項

ビジネスプロセス管理
BPMN
BPEL
統一モデリング言語
ドメイン固有言語
モデル駆動工学
プロセスアーキテクチャ
XPDL
* プロセス・モデリング

もう一度検索