プロセッション

『プロセッション』：ウェザー・リポートの変革期を象徴する一枚

ウェザー・リポートが1983年に発表した通算11枚目のスタジオ・アルバム、『プロセッション』（Procession）は、バンドの歴史において大きな転換点となった作品です。このアルバムでは、長年バンドを支えたメンバーが交代し、新たな顔ぶれが加わりました。

ベーシストのジャコ・パストリアス、ドラマーのピーター・アースキンという、バンドの黄金期を築き上げた強力なリズムセクションに代わり、新たにヴィクター・ベイリー（ベース）、オマー・ハキム（ドラム）、そしてパーカッションにホセ・ロッシーが参加しました。ジャコ・パストリアスの革新的なベースプレイやピーター・アースキンの洗練されたドラミングは、ウェザー・リポートのサウンドのトレードマークとなっていただけに、この大規模なメンバー交代は当時、音楽界に大きな驚きをもって迎えられました。興味深いことに、これら新しい3人のミュージシャンは、バンドの核であるジョー・ザヴィヌルやウェイン・ショーターと直接会う前に、既にウェザー・リポートとの契約を済ませていたとされています。この事実は、バンドの未来に対する明確なビジョンがこの時点で既に存在していたことを示唆しているのかもしれません。新メンバーを迎えたウェザー・リポートは、この『プロセッション』で新たなサウンドの探求を開始します。

音楽的な特徴としては、特に収録曲「ホエア・ザ・ムーン・ゴーズ」が挙げられます。この楽曲では、世界的に有名なボーカル・グループであるマンハッタン・トランスファーがフィーチャーされており、ウェザー・リポート史上初めて、楽曲全体にわたって明確な歌詞とボーカルが導入されました。インストゥルメンタル楽曲を中心としてきたジャズ・フュージョン界の巨匠たちが、これほど本格的にボーカルを取り入れたことは、当時のファンにとって非常に新鮮な出来事でした。マンハッタン・トランスファーによる豊かな表現力の歌唱は、バンドの演奏と見事に調和し、これまでにない新しいウェザー・リポートの音楽性を生み出しています。このボーカルをフィーチャーするという試みは、単なる一時的な実験に留まらず、『プロセッション』に続く3枚のスタジオ・アルバムでも継続的に取り入れられ、彼らの音楽性の幅をさらに広げる重要なきっかけとなりました。

このような大胆なメンバー交代と音楽的な挑戦を経て生まれた『プロセッション』は、リリース当時から音楽ファンの間で活発な議論を巻き起こしましたが、結果的に多くの音楽ファンや批評家たちから、ウェザー・リポートが残した数ある作品の中でも特に優れた一枚として高く評価されています。新メンバーによるフレッシュでダイナミックな演奏、そしてボーカル曲の導入による表現の多様性が、このアルバムを傑作と位置づける大きな理由となっています。その評価は時を経ても色褪せず、バンド後期の傑作として現在も多くのリスナーに愛されています。

『プロセッション』の制作に携わった主なミュージシャンは以下の通りです。

ジョー・ザヴィヌル (Joe Zawinul) - キーボード
ウェイン・ショーター (Wayne Shorter) - テナーサックス、ソプラルサックス
オマー・ハキム (Omar Hakim) - ドラム、ギター、ボーカル
ヴィクター・ベイリー (Victor Bailey) - ベース
ホセ・ロッシー (Jose Rossy) - パーカッション
マンハッタン・トランスファー (Manhattan Transfer) - ボーカル (「ホエア・ザ・ムーン・ゴーズ」)

総じて、『プロセッション』は、ウェザー・リポートがそのキャリアにおいて新たなサウンドと表現方法を模索した意欲作であり、バンドの変遷を知る上で欠かせないアルバムと言えるでしょう。多くのファンや批評家が認めるように、まさに彼らのディスコグラフィーの中でも光彩を放つ一里塚的作品です。

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