ピーター・アースキン

ピーター・アースキン：ジャズ界を牽引するドラムの巨匠

ピーター・アースキン（Peter Erskine, 1954年6月5日 - ）は、アメリカ合衆国出身のドラム奏者、作曲家であり、ジャズおよびフュージョン音楽の世界で広く知られています。ロサンゼルスを拠点に活動し、その卓越した技術と音楽性で、数々の著名なミュージシャンとの共演や、自身のリーダーアルバムをリリースしています。また、教育者としても後進の育成に力を注いでおり、南カリフォルニア大学ソーントン音楽学校で教鞭を執るなど、多岐にわたる活動を展開しています。

生い立ちと音楽への目覚め

1954年、ニュージャージー州ソマーズ・ポイントで精神科医の息子として生まれたアースキンは、4歳でドラムを始めました。ミシガン州のインターローシャン芸術アカデミーで音楽の基礎を学び、その後、インディアナ大学でパーカッションを専攻しました。大学在学中にジャズ・サマーキャンプに参加したことが、ジャズ界への進出のきっかけとなりました。

プロとしてのキャリア

1972年、スタン・ケントン・オーケストラに加入し、プロとしてのキャリアをスタートさせました。その後、メイナード・ファーガソンのバンドを経て、1978年にはウェザー・リポートに加入し、ジャコ・パストリアスとのリズムセクションを担いました。ウェザー・リポートとジャコの「ワード・オブ・マウス・ビッグ・バンド」で4年間活動し、5枚のアルバムを発表した後、ステップス・アヘッドに参加しました。1983年には、アンティルズ・レコードから『Swingrass '83』にも参加しています。

教育者としての活動

アースキンは、音楽活動と並行して、南カリフォルニア大学ソーントン音楽学校で教鞭を執り、後進の育成にも尽力しています。1992年には、バークリー音楽大学から名誉博士号を授与されました。また、ドラミング教育用著書として『The Drum Perspective』や『Drumset Essentials』シリーズを出版するなど、教育者としての活動も積極的に行っています。

多岐にわたる音楽活動

アースキンは、1980年代後半に日本コロムビアの「DENON」レーベルから複数のアルバムを発表し、その際にヴィンス・メンドーザを起用しました。また、ECMからもアルバムをリリースしています。1993年と1994年には、スティーリー・ダンのツアーにも参加し、ケイト・ブッシュのアルバム『エアリアル』では、エバーハルト・ウェーバーとチームを組んで演奏するなど、ジャンルを超えた幅広い活動を展開しています。その他、ダイアナ・クラール、イリアーヌ・イリアス、クィーン・ラティファ、リンダ・ロンシュタットなど、様々なアーティストのレコーディングやプロデュースにも携わっています。2011年には、ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスで発表された新作オペラ『アンナ・ニコル』にも参加しています。

ドラム教育への貢献

アースキンのドラミング教育への貢献は、書籍の出版だけでなく、自身のドラム音源をサンプラーやサンプリング・シンセサイザーで使えるようにした「サンプリング用ドラム音源CD」の発売にも及びます。この音源は、レコーディング・スタジオで使いやすく、様々なサウンドにマッチするため、好評を得ました。

影響力と功績

ピーター・アースキンは、その卓越したドラミング技術と幅広い音楽性、そして教育への情熱を通じて、ジャズ音楽界に大きな影響を与えています。彼のビッグ・バンドとボブ・ミンツァーのビッグ・バンドとの共演は、多くのドラムとドラミングを学ぶ生徒たちにとって、現代ビッグ・バンドにおけるジャズ・ファンク演奏の格好の研究対象となっています。彼の活動は、次世代のミュージシャンたちにインスピレーションを与え続けています。

主なディスコグラフィー

リーダー・アルバム

『ピーター・アースキン』 - Peter Erskine (1982年)
『カレント・イヴェンツ』 - Current Events (1986年)
『レイルロード』 - Railroad (1986年)
『トランジション』 - Transition (1987年)
『ライヴ・イン・ボストン』 - John Abercrombie / Marc Johnson / Peter Erskine (1989年)
『モーション・ポエット』 - Motion Poet (1988年)
『オーロラ』 - Aurora (1989年)
『スター』 - StAR (1991年)
『スウィート・ソウル』 - Sweet Soul (1991年)
『ユー・ネヴァー・ノウ』 - You Never Know (1993年)
Time Being (1994年)
From Kenton to Now (1995年)
History of the Drum (1995年)
Traction Avant (1995年)
『アズ・イット・イズ』 - As It Is (1996年)
Lava Jazz (1997年)
Jason Salad! (1997年)
『ジュニ』 - Juni (1999年)
Relativity (1999年)
Live at Rocco (2000年)
『ザ・ハドソン・プロジェクト』 - The Hudson Project (2000年)
Side Man Blue (2001年)
E_L_B (2001年)
Old School (2001年)
Badlands (2002年)
Cologne (2003年)
Music For Moderns (2005年)
Worth the Wait (2007年)
The Interlochen Concert (2010年)
Joy Luck (2011年)
『ドクター・アム』 - Dr. Um (2015年)
『セカンド・オピニオン』 - Second Opinion (2016年)
In Praise of Shadows (2016年)
On Call (2018年)

参加アルバム (一部)

ウェザー・リポート
『ミスター・ゴーン』 - Mr. Gone (1978年)
『8:30』 - 8:30 (1979年)
『ナイト・パッセージ』 - Night Passage (1980年)
『ウェザー・リポート』 - Weather Report (1982年)
『ディス・イズ・ディス』 - This Is This (1986年)
ワード・オブ・マウス・ビッグ・バンド
『ライヴ・イン・ニューヨーク：コンプリート1982 NPR ジャズ・アライヴ! レコーディング』 - Truth, Liberty & Soul (2017年)
『Twins I』および『Twins II』 (1982年) (後に統合)
ステップス・アヘッド
『パラドックス』 - Paradox - Live At Seventh Avenue South (1982年)
『ステップス・アヘッド』 - Steps Ahead (1983年)
『モダン・タイムズ』 - Modern Times (1984年)
『マグネティック』 - Magnetic (1986年)
その他
スタン・ケントン・オーケストラ: National Anthems Of The World (1972年)
メイナード・ファーガソン: 『征服者 ～ロッキーのテーマ』 - Conquistador (1977年)
渡辺香津美: 『TO CHI KA』 - TO CHI KA (1980年)
矢野顕子: 『ウェルカムバック』 - Welcome Back (1989年)
スティーリー・ダン: 『アライヴ・イン・アメリカ』 - Alive In America (1995年)
ケイト・ブッシュ: 『エアリアル』 - Aerial (2005年)

CDブックとサンプリングCD

The Drum Perspective (1998年)
Drumset Essentials, Vol. 1 (2002年)
Drumset Essentials, Vol. 2 (2002年)
Drumset Essentials, Vol. 3 (2003年)
Time Awareness For All Musicians (2005年)
Living Drums! (1995年)

プロデュース

ジョン・スコフィールド: 『ギタリストの肖像』 - Time on My Hands (1990年)

ビデオグラフィ

数多くの教育用ビデオやライブ映像をリリースしています。

外部リンク

公式ウェブサイト
ピーター・アースキン - Discogs（英語）

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