プロタスリティス

プロタスリティス：白亜紀のスペインを支配した大型肉食恐竜

プロタスリティス（Protathlitis）は、約1億年前（前期白亜紀）のスペインに生息していた、スピノサウルス科に属する獣脚類の恐竜です。推定全長は10～11メートルにも及び、当時としては大型の肉食動物であったと考えられています。

発見と命名：サッカークラブに因んだ学名

この恐竜の存在は、スペインで発見された化石によって明らかになりました。発見された化石は、右上顎骨、歯、そして5個の椎骨など、比較的に断片的なものでしたが、それらの特徴から新たな属・種として記載されました。

特筆すべきはその学名です。属名であるProtathlitisは、ギリシャ語で「チャンピオン」を意味します。これは、スペインのサッカークラブであるビジャレアルCFが2021年にUEFAヨーロッパリーグで優勝した事、そして2023年に同クラブが創立100周年を迎えた事を記念して命名されました。恐竜の学名にサッカークラブの功績が反映されているという、珍しい例と言えるでしょう。種小名は、化石の発見地であるスペインの地名に由来しています。

分類：基盤的なバリオニクス亜科

系統分類学的研究により、プロタスリティスはバリオニクス亜科に属する基盤的な種であると考えられています。バリオニクス亜科は、スピノサウルス科の中でも比較的原始的なグループに位置付けられます。発見された化石の形態学的特徴から、他のスピノサウルス科恐竜との類縁関係や進化上の位置づけが詳しく分析されています。

古環境：河口域の生態系

プロタスリティスの化石が発見されたアルシリャス・デ・モレラ累層は、当時、淡水と海水が混ざり合う河口環境であったと考えられています。この地層からは、プロタスリティス以外にも様々な生物の化石が発見されています。例えば、鳥盤類のイグアノドン類やモレラドン、そして同じくスピノサウルス科に属するバリオナヴェナトリクスなどが挙げられます。さらに、バリオニクスもこの地域に共存していた可能性が示唆されています。

これらの発見は、当時の生態系を復元する上で重要な手がかりとなります。プロタスリティスは、多様な生物が生息していた河口域において、食物連鎖の頂点に位置する捕食者として重要な役割を果たしていたと考えられます。今後の研究によって、この地域の古環境や、プロタスリティスを含む様々な生物の相互関係がより詳細に明らかになることが期待されます。

まとめ

プロタスリティスは、そのユニークな学名と、白亜紀前期のヨーロッパにおけるスピノサウルス科の進化を理解する上で重要な位置を占める恐竜です。発見された化石は断片的ですが、それらの特徴から、その生態や当時の環境についての貴重な情報が得られています。今後の研究により、さらに多くの情報が明らかになることで、プロタスリティスを含む白亜紀前期の生態系全体の理解が深まるでしょう。

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