プロヌンシアミエント

プロヌンシアミエント（スペイン語: pronunciamiento）は、「布告」「宣言」を意味し、19世紀のスペイン、ポルトガル、ラテンアメリカにおいて頻繁に見られた軍事反乱またはクーデターの一形式です。これは単なる軍事行動ではなく、政治的な意図と戦略が込められたものでした。

プロヌンシアミエントの特徴

一般的なクーデターとは異なり、プロヌンシアミエントは秘密裏に計画・実行されるものではありません。むしろ、公然と行われ、その目的は現政府に対する反対勢力を結集し、世論を味方につけることにあります。中堅クラスの士官グループが、現政府（選挙で選ばれた政府や、以前のクーデターで権力を握った政府を含む）への反対を公に宣言することが一般的です。

通常のクーデターが迅速かつ直接的な暴力によって政権を掌握しようとするのに対し、プロヌンシアミエントは無血、またはそれに近い形で行われることが多いです。暴力の脅威を示唆したり、政府や体制への不支持を表明することで、体制の変更を試みます。これは、軍部が政治的に中立な下位機関としてではなく、独自の権利を持つ政治主体として行動する「軍閥主義」の一形態と見なすことができます。

プロヌンシアミエントのプロセス

プロヌンシアミエントの首謀者は、行動を起こす前に、まず他の士官たちに自身の考えを伝え、支持を得られるかどうかを確認します。プロヌンシアミエントが実行されると、首謀者は軍部が政府を支持するか、それとも反乱を支持するかを見極めます。この段階では、まだ戦闘は起こりません。もし反乱が支持を得られなければ、首謀者は敗北し、国外逃亡、退役、または逮捕という結果を迎えます。しかし、軍部の大部分がプロヌンシアミエントを支持した場合、政府は退陣を余儀なくされます。この点において、プロヌンシアミエントは立法機関による不信任決議の軍事版と捉えることもできます。

歴史的な例

プロヌンシアミエントの具体的な例としては、以下のようなものがあります。

1820年、ラファエル・デル・リエゴによるスペイン立憲革命
1854年、レオポルド・オドンネルによる1854年革命
1868年、フアン・プリムによる名誉革命
1932年、ホセ・サンフルホによるサンフルハダ

メキシコでは、同様の宣言が「綱領（Plan）」という名前で、より詳細な書面として発表されることが多くありました。ただし、最も有名な例は、1810年にミゲル・イダルゴがメキシコ独立戦争の開始時に行った「ドロレスの叫び」であり、これは口頭で発表されたものです。

スペイン内戦との違い

1936年に勃発したスペイン内戦は、プロヌンシアミエントを伴うものではありませんでした。これは、プロヌンシアミエントが必ずしも流血を伴わない、政治的な宣言と軍事的な支持によって体制を変革しようとする試みであるのに対し、スペイン内戦はより大規模で、激しい武力衝突を伴うものであったためです。

プロヌンシアミエントは、軍部が政治に深く関与し、その影響力を行使する特異な形態であり、19世紀のスペインやラテンアメリカの政治史を理解する上で重要な要素となっています。

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