プロ野球ファミリースタジアム (ゲームアーツ)

ゲームアーツ版ファミスタシリーズ

バンダイナムコエンターテインメント（旧ナムコ）が展開する人気野球ゲーム「プロ野球ファミリースタジアム」（ファミスタ）シリーズ。その中でも、ゲームアーツが独自に移植・改良を手がけたものが、俗に「ゲームアーツ版ファミスタ」と呼ばれます。本稿では、1988年にNECのパーソナルコンピュータPC-88VA向けに発売された『プロ野球ファミリースタジアムペナントレース版』を中心に、その続編であるPC-88VA版『'89年度ペナントレース版』、そしてFM TOWNS版『'90年度ペナントレース版』を含むこのシリーズについて解説します。

システムの特徴

ベースとなっているのは、多くの野球ゲームファンに親しまれたファミコン版ファミスタです。操作体系など、基本的なゲームシステムはファミコン版の感触を踏襲していますが、一部にはPCエンジン版『ワールドスタジアム』から取り入れられた要素も見られます。ただし、PCエンジン版で導入された「エラー（落球）」の概念は採用されておらず、この点はファミコン版に近い仕様と言えるでしょう。
操作面では、コントローラー（パッド）の使用が可能です。特にPC-88VA版では、ゲームアーツが別途販売していた「デュアルジョイポート」を接続することで、2人同時にパッドを使って白熱した対戦プレイを楽しめる点が特徴でした。
試合中のユーザーインターフェースにも工夫が見られます。打者の成績がプレイ画面の下部にリアルタイムで表示されるようになり、より試合状況を把握しやすくなっています。また、試合終了後には「ゲームアーツスポーツ」と名付けられた画面で、その試合に出場した全選手の打席結果が一覧で確認できる機能が搭載されており、データ分析にも役立ちました。これはファミコン版の「ナムコットスポーツ」に相当する機能です。

登場チーム

実在の日本野球機構（NPB）加盟12球団をモデルにしたチームに加え、ファミスタシリーズでお馴染みのナムコスターズ、メジャーリーガーズが収録されています。ゲームアーツ版独自のチームとして、以下の二つが存在します。

- オールドリームス（Aチーム）: PCエンジン版に登場した同名のチームと、同じくPCエンジン版のオールドスターズを合わせたような連合チームです。初代作品では、ホーネッツ（Hチーム）の代打として「かけうら」、オリエンツ（Oチーム）の先発投手として「みすはら」が、このチームから「人材流出」した形で一時的に移籍しているというユニークな設定も見られました。
- ゲームアーツ（Xチーム）: このチームは初代『プロ野球ファミリースタジアムペナントレース版』のみに登場する特別なチームです。チームの中心は、4番打者でありながらエースピッチャーも兼ねる万能選手「ごたい」（当時のゲームアーツプロデューサーである五代響氏がモデル）です。さらに、ナムコスターズの人気選手「ぴの」をも上回る驚異的な俊足を持つ「しるふぃ」（同社開発のシューティングゲーム『シルフィード』が由来とされます）といった個性的な選手が揃っており、その足を使った機動力野球を得意としていました。

なお、『'90年度ペナントレース版』以降の作品では、ナムコスターズ、ゲームアーツ、オールドリームス、メジャーリーガーズの合計4チームについて、選手や打順などを自由に編集できるエディット機能が搭載され、よりプレイヤーの好みに合わせたチーム作りが可能となりました。

収録球場

選択できる球場は、作品によって数が異なります。初代では2種類でしたが、『'89年度ペナントレース版』からは4種類の球場が登場しました。

- ドーム球場: 東京都にある有名なドーム球場、東京ドームをモデルにしています。ただし、PCエンジン版のように天井に打球が当たってインプレイになる、といった特殊な演出はありませんでした。
- 青空球場: 内外野全てが人工芝の、標準的なグラウンドです。広さはドーム球場とほぼ同じですが、常にデーゲームで開催され、風の影響も受けないため、試合展開という点ではドーム球場との大きな違いはありません。球場の外にはのどかな田園風景が広がっています。
- 河原球場: 『'89年度ペナントレース版』で初登場。ファミスタシリーズの『'88年度版』以降に登場する河川敷球場をベースにしたものです。グラウンドが非常に狭く設計されているため、他の球場であれば単なるポップフライにしかならないような打球でも、柵越えのホームランになりやすいという特徴があります。こちらも青空球場と同様に、常にデーゲームで行われます。
- USA球場: こちらも『'89年度ペナントレース版』からの登場です。内外野が天然芝で、広大な敷地を持つ大きな球場です。青空球場と同様に、この球場での試合も常にデーゲームとなります。

ゲームアーツ版ファミスタシリーズは、ファミコン版を基盤としながらも、PC版ならではの機能強化や、ゲームアーツらしいユニークなオリジナル要素を取り入れた意欲作と言えるでしょう。

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