ヘイト・ユー・ギブ

ヘイト・ユー・ギブ：2つの世界を生きる少女と、正義を求める闘い

2018年公開のアメリカ映画『ヘイト・ユー・ギブ(原題:The Hate U Give)』は、アルジー・トーマスの小説を原作とする社会派ドラマです。監督はジョージ・ティルマン・ジュニア、主演はアマンドラ・ステンバーグが務め、日本でもデジタル配信で公開されました。本作は、貧困層の黒人地区と裕福な白人学生の通う私立高校という、異なる2つの世界を行き来する16歳の少女スター・カーターの物語です。

物語：正義と沈黙の狭間で

スターは、低所得者層の黒人が多く住むガーデン・ハイツで家族と暮らしていますが、私立高校に通学しています。ある日、親友のカリルと近所のパーティーに参加した帰り道、カリルは警官に何の理由もなく呼び止められ、誤解から射殺されてしまいます。

この事件は全米で報道されますが、マスメディアはカリルを犯罪者扱いし、警察の過剰な対応を正当化しようとする報道姿勢に、スターは強い憤りを感じます。カリルは、生活のために違法薬物の売人をしていましたが、スターにとってカリルはかけがえのない親友でした。スターは、白人の友人に自分の生活環境を知られたくないという気持ちや、カリルの雇い主からの報復を恐れて、事件について沈黙を保とうとします。しかし、親友の無念を晴らすため、そして真実を明らかにするため、彼女は沈黙を破り、闘いを決意するのです。

登場人物：それぞれの葛藤と選択

物語には、スターを取り巻く様々な人物が登場し、それぞれの立場や考え、葛藤が描かれています。

スター・カーター: 2つの世界を行き来する中で、正義と現実の狭間で苦悩する16歳の少女。アマンドラ・ステンバーグの繊細かつ力強い演技が、彼女の心の揺れ動きを見事に表現しています。
リサ・カーター(スターの母): 看護師として働くスターの母。娘を愛し、常に支えようとする一方で、社会の不公平に苦悩する母親の姿が描かれています。
マーヴェリック・カーター(スターの父): 食料雑貨店を経営するスターの父。家族を愛し、娘を力強く励ます一方で、社会の現実を目の当たりにし、無力感を抱いています。
カリル・ハリス: スターの親友。生活のために違法薬物の売人をしていましたが、優しい心の持ち主でした。彼の死が、物語の大きな転換点となります。
クリス: スターの白人の恋人。スターの抱える問題を理解しようとしますが、彼女の世界を完全に理解することはできません。
その他: スターの兄弟、弁護士、警察官など、様々な立場の人物が登場し、物語に深みを与えています。

制作と公開：社会問題への強いメッセージ

映画『ヘイト・ユー・ギブ』は、2016年から制作が始まり、多くの俳優が参加しました。撮影はジョージア州アトランタで行われ、公開に際しては、オフィシャル・トレイラーやトロント国際映画祭でのプレミア上映などが行われました。当初の公開予定から変更があったものの、限定公開から徐々に拡大公開され、興行収入も獲得しました。

高い評価と社会への影響：ヤングアダルト小説の新たな可能性

本作はRotten TomatoesやMetacriticなど、批評サイトで非常に高い評価を得ており、アマンドラ・ステンバーグの演技も高く評価されました。映画は、人種差別や警察の暴力といった重いテーマを扱いながらも、若者たちの葛藤や友情、そして成長を描いています。単なる社会問題映画ではなく、ヤングアダルト小説を原作とした作品として、恋愛やファンタジーとは異なるテーマでも、高い芸術性と訴求力を持つ作品であることを証明しました。

まとめ：見過ごせない社会派ドラマ

『ヘイト・ユー・ギブ』は、人種差別や警察の暴力といった社会問題を真正面から描きながらも、登場人物たちの感情や葛藤を丁寧に表現した、感動的な作品です。アマンドラ・ステンバーグの素晴らしい演技、そして社会問題への鋭い視点は、観る者の心を強く揺さぶることでしょう。この映画は、私たちに、社会における不平等や偏見、そして正義について、改めて考えさせる機会を与えてくれます。

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