ヘキサクロリド白金(IV)酸

ヘキサクロリド[白金]酸：合成、性質、および用途

ヘキサクロリド[白金]酸 (H₂PtCl₆]) は、白金]錯体の一種であり、入手容易な[[白金の可溶性化合物として、様々な白金化合物の合成における出発物質として広く用いられています。試薬としては非常に高価であり、価格は白金地金の相場に大きく依存します。

合成法

ヘキサクロリド[白金]酸の合成は、金属[白金]]粉末を出発原料として行われます。伝統的な方法は、白金粉末を熱した王水に溶解させる方法ですが、この方法ではニトロシルイオン (NO⁺) の混入が起こりやすく、純粋なヘキサクロリド白金]酸を得ることが困難です。ニトロシルイオンは[[白金原子と強い親和性を示すため、除去が容易ではありません。

王水法における反応式は以下の通りです。

3Pt + 4HNO₃ + 18HCl → 3H₂[PtCl₆] + 4NO + 8H₂O

ニトロシル錯体が生成する反応も知られています。

3Pt + 5HNO₃ + 15HCl → 3[PtCl₅(NO)] + 4NO + 10H₂O

Pt + 2HNO₃ + 6HCl → [PtCl₄(NO)₂]Cl₂ + 4H₂O

これらのニトロシル錯体は、塩酸を加えて蒸発乾固する操作を繰り返すことで、ニトロシルイオンを追い出すことができますが、完全に除去することは容易ではありません。

より純粋なヘキサクロリド[白金]酸を得るためには、白金粉末を温めた濃塩酸に懸濁させ、塩素ガスを通じるか、過酸化水素水を滴下して発生する塩素で酸化溶解させる方法が有効です。

Pt + 2HCl + 2Cl₂ → H₂[PtCl₆]

Pt + 6HCl + 2H₂O₂ → H₂[PtCl₆] + 4H₂O

化学的性質

ヘキサクロリド[白金]酸は、赤褐色の潮解性の強い結晶として得られます。六[水]]和物 ((H₃O⁺)₂[PtCl₆]・4H₂O) はオキソニウムイオンを含み、水溶液は2価の強酸性を示します。白金]錯体は5d⁶の低スピン型電子配置を取り、[[配位子の交換反応に対して速度論的に不活性で、比較的安定です。しかし、水溶液中では徐々に加水分解を受けます。

[PtCl₆]²⁻ + nH₂O → [PtCl₆₋ₙ(OH)ₙ]²⁻ + nH⁺ + nCl⁻

強塩基性[水]]溶液中では、完全に加水分解して、淡黄色のヘキサヒドロキシド[[白金]酸イオン [Pt(OH)₆]²⁻ を生成します。

[PtCl₆]²⁻ + 6OH⁻ → [Pt(OH)₆]²⁻ + 6Cl⁻

また、二塩化ヒドラジニウム (N₂H₆Cl₂) で[還元]]すると、テトラクロリド[[白金]酸になります。

2[PtCl₆]²⁻ + N₂H₆²⁺ → 2[PtCl₄]²⁻ + N₂ + 6H⁺ + 4Cl⁻

ヘキサクロリド[白金]酸イオンの標準酸化還元電位は以下の通りです。

PtCl₆²⁻(aq) + 2e⁻ = PtCl₄²⁻(aq) + 2Cl⁻(aq), E° = 0.726 V

ヘキサクロリド[白金]酸イオンとヘキサクロリド[白金]酸塩

ヘキサクロリド[白金]酸イオン (PtCl₆]²⁻) は、ヘキサクロリド白金]酸の電離により生成する2価のアニオンです。[[正八面体型構造をとり、d²sp³混成軌道をとります。Pt-Cl結合距離はカリウム塩で233 pmです。

ヘキサクロリド[白金]酸塩は、ヘキサクロリド[白金]酸イオンを含むイオン結晶です。ヘキサクロリド[白金]酸水溶液に塩化物イオンを加えて濃縮すると析出します。ナトリウム塩 (Na₂[PtCl₆]) など多くのものは水に溶けやすいですが、カリウム塩 (K₂[PtCl₆])、ルビジウム塩 (Rb₂[PtCl₆])、セシウム塩 (Cs₂[PtCl₆])、銀塩 (Ag₂[PtCl₆])、テトラアルキルアンモニウム塩 ((NR₄)₂[PtCl₆]) などは難溶性です。

アンモニウム塩 ((NH₄)₂[PtCl₆]) は比較的溶解度が小さく、再結晶による精製が容易です。強熱すると分解して白金海綿を生じるため、白金の精錬や白金触媒の合成に利用されます。

3(NH₄)₂[PtCl₆] →Δ 3Pt + 2N₂ + 6NH₃ + 18HCl

また、[シュウ酸]]塩と共存下で加熱すると還元され、テトラクロリド[[白金]酸塩になります。

[PtCl₆]²⁻ + C₂O₄²⁻ → [PtCl₄]²⁻ + 2CO₂ + 2Cl⁻

まとめ

ヘキサクロリド[白金]酸は、高価ながら重要な[白金]]化合物であり、その合成、性質、および様々なヘキサクロリド白金]酸塩の特性を理解することは、[[白金の化学において重要です。

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