ヘデントール

ヘデントールは、2021年4月6日に誕生した日本のサラブレッド競走馬です。

ポルトガル語で「救世主」を意味するこの馬名は、ブラジルのコルコバードの丘に建つキリスト像に由来しています。特に長距離レースにおいて優れた競走能力を示し、2025年にはダイヤモンドステークスおよび天皇賞（春）を制覇しました。

競走馬としての歩み

2歳時 (2023年)

ヘデントールのキャリアは、2023年11月18日、東京競馬場の芝2000メートルで行われた2歳新馬戦で始まりました。このデビュー戦では、クリストフ・ルメール騎手を背に、道中を後方で進みました。最後の4コーナー手前で一気にポジションを上げ、素晴らしい末脚を披露しましたが、のちに皐月賞馬となるジャスティンミラノには一歩及ばず、2着での惜しい敗戦となりました。

3歳時 (2024年)

年が明けて3歳を迎えた初戦は、2024年1月13日の中山競馬場芝2000メートルの未勝利戦でした。このレースでも序盤は後方に待機しましたが、3コーナー付近から早めに進出し、最後の直線では力強く抜け出して、2戦目にして待望の初勝利を挙げました。

続く3月9日、中山芝2000メートルの3歳1勝クラスに出走。ここでは最後方からレースを進め、直線で大外に持ち出すと、次元の違う末脚で全ての先行馬をごぼう抜きにし、後続を3馬身も引き離す圧勝で連勝を飾りました。

重賞競走への初挑戦となった4月27日の青葉賞（GII）では、再び後方からの競馬を選択しましたが、直線での追い上げも不発に終わり、優勝したシュガークンから大きく離された8着に敗れました。

仕切り直しの一戦となった6月16日の町田特別（2勝クラス）では、打って変わって先行策を取り、2番手でレースを進めました。直線に入ると楽な手応えで抜け出し、タイセイフェリークに2馬身差をつけて快勝。これがキャリア3勝目となりました。

夏の8月17日には日本海ステークス（オープン）に挑戦。このレースでは道中を好位で追走し、直線でしぶとく脚を伸ばして先頭へ。最後はナイトインロンドンに3馬身半もの差をつける圧勝で、オープンクラスへの昇級を果たしました。

秋の最大目標として迎えた10月20日の菊花賞（GI）では、スタートでやや出遅れてしまい、序盤は最後方からの苦しい展開を強いられました。しかし、向正面から徐々に位置取りを上げ、長い直線でも諦めずに脚を使い続け、先に抜け出したアーバンシックには届きませんでしたが、見事な追い込みで2着に食い込みました。このGIでの好走は、ヘデントールが長距離レースで通用する能力を持っていることを証明しました。

4歳時 (2025年)

2025年の始動戦は、2月22日の長距離重賞、ダイヤモンドステークス（GIII）でした。道中、好位集団の中で脚を温存し、2周目の3コーナーから4コーナー中間にかけて一気にスパート。先頭に立つと、そのままリードを広げ、最後の直線では後続に4馬身差をつける圧巻の内容で、念願の重賞初制覇を飾りました。

そして、春の古馬長距離王決定戦、5月4日の天皇賞（春）（GI）に出走。この大一番ではダミアン・レーン騎手と初めてコンビを組み、前走の勝利と長距離実績が評価され、1番人気に支持されました。レースでは中団よりやや後ろ、6～7番手あたりでレースを進めました。直線に入ると、馬場の良い外目に進路を取り、先にロングスパートを仕掛けてきたビザンチンドリームとの熾烈な叩き合いとなりました。ゴール前、ヘデントールがわずかに抜け出し、ライバルをアタマ差凌いで見事に勝利。栄光のGIタイトルを初めて手にしました。この勝利は、ヘデントールの競走生活において最高の栄誉であるとともに、騎乗したダミアン・レーン騎手にとってもJRAのGI通算6勝目という記念すべき勝利となりました。

救世主という名にふさわしい劇的な勝利を飾り、長距離界のトップホースとなったヘデントールの今後のさらなる活躍が期待されています。

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