ヘボソ塚古墳

ヘボソ塚古墳の概要

ヘボソ塚古墳（へぼそづかこふん）は、兵庫県神戸市東灘区岡本一丁目に位置する古墳で、古墳時代前期に築かれました。この古墳は六甲山の南麓にあり、優れた位置に作られています。前方部は西北西に向かっており、全長は63メートルに達します。この形状から、前方後円墳であることが明らかです。江戸時代には『摂津名所図会』において、周囲には小さな塚が20ほど存在していると記されています。

明治時代以降、ヘボソ塚古墳は民有地となりましたが、都市の発展に伴ってその姿は失われました。特に明治30年（1897年）以降、市街化工事が進行し、最終的には長尾良吉の邸宅が立つ場所となったため、古墳の構造はほとんど残っていません。現在、古墳の痕跡を示すのは「扁保曽塚址」の石碑だけとなっています。

出土品

ヘボソ塚古墳は、特に出土品が注目されています。明治28年（1895年）の発掘調査によって、後円部の竪穴式石室からは多くの貴重な遺物が発見されました。具体的には、鏡が6面、石釧が2個、勾玉、菅玉、小玉などが含まれていました。これらの出土品は、東京国立博物館に保存されています。

特に注目すべきは、出土した鏡のうち、2面が三角縁神獣鏡であり、いずれも同一の型式を持っています。また、唐草文帯三神二獣鏡は加古川市の東車塚古墳で出土した鏡と同じ型式のものです。さらに、天・王・日・月の模様が描かれた唐草文帯二神二獣鏡は、長岡京市の長法寺南原古墳で発見された同型の鏡と一致しており、合計で7面が確認されています。

ヘボソという名称の由来

「ヘボソ」という名前は16世紀に初めて文献に現れますが、その具体的な由来については現在でも明らかになっていません。地域の伝承では、在原業平の墓とする説が『摂津志』に記載されていますが、築造時期との不一致からこの説は現在では否定されています。

さらに、「岡本のをさばに立てるへぼそ塚布織る人は岡本にあり」という民謡があり、これは地域の文化と関連しています。また、旧正月の二日に織姫が機を織る音が聞こえるとされ、古代の織姫と結び付けられています。道谷卓は「オサバ」の「オサ」が「筬」（機織りに用いる器具）を指すと考え、伝承と民謡の関連性を示唆しています。

ヘボソ塚古墳は、古代の日本文化の一端を示す重要な遺構の一つであり、現在もその存在が多くの人々の関心を集めています。この地域の歴史や文化を追求する上で、見逃せないスポットと言えるでしょう。

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