ヘマークラフィーア

ヘマークラフィーア

『ヘマークラフィーア』（Hämmerklavier）は、ドイツの作曲家であるモーリッツ・エッゲルトによって作曲されている進行中のピアノ連作集です。「ハンマーピアノ」を意味するこのドイツ語のタイトルを持つ作品群は、1993年の開始以来、継続的に新しい作品が追加されており、その規模は現在も拡大し続けています。

作品の特性と展開

この連作集は、当初、作曲家自身が卓越したピアニストであったことから、自らの演奏のために構想されました。初期の作品では、従来のピアノ演奏技法に留まらない、非常に身体的なパフォーマンスが重視されていました。鍵盤を足や顎、鼻で操作したり、演奏中に声を発したり、あるいは楽器に体当たりしたりするなど、ピアニストの視覚的なアクションや特異な身体の動きが作品の重要な要素となっていたのです。この初期のパフォーマンス志向を示す作品は、Wergoレーベルからアルバムとして発表され、注目を集めました。

しかし、他の著名なピアニストから委嘱を受けて作品を創作する機会が増えるにつれて、『ヘマークラフィーア』の性格は変化していきました。作曲家本人の特別な身体パフォーマンスを必須とするスタイルから、より多様な演奏家によって演奏されることを想定した作品へと幅が広がったのです。その結果、一人で演奏するピアノ・ソロ作品に加え、二人で演奏するデュオ作品（例：XXXI Dual Band）もシリーズに加えられるようになり、表現の可能性をさらに拡張しています。このように、『ヘマークラフィーア』は、その起源である作曲家の個人的なパフォーマンスから、より普遍的な演奏形態へと進化を続けています。

楽譜の取り扱い

『ヘマークラフィーア』の楽譜は、発表された時期によって取り扱っている出版社が異なります。初期の1994年から2000年まではSchott社が、2001年から2019年まではSikorski社が楽譜を出版していました。そして、2020年以降は、リコルディ・ベルリン社から楽譜が刊行されています。

作品一覧（一部）

『ヘマークラフィーア』の各作品は、ローマ数字によって整理されています。以下は、2020年までに発表された作品の一部です。

I: Ins Freie (1994)
II: Über die ersten vier Töne von Lulu (1994)
III: One Man Band (1994)
IV: Zwei Miniaturen (1993/94)
V: Fallstudie (1994)
VI: Variationen über Teba’Ini Leh (1994)
VII: Geheimes Verlangen (1995)
VIII: Jerusalem (1995)
IX: Underground (1995)
X: Mouth Organ (1995)
XI: What if 1 composer from 1 country wrote 60 pieces under a second for solo piano? (1998)
XII: highway 61 (2001)
XIII: 2 ostinati (2002)
XIV: The trouble with trills (2002)
XV: Nasentanz (2003)
XVI: Der Höllenfranz (2003/4)
XVII: Advanced Kabuki (2004)
XVIII: 3 Miniaturen (2006)
XIX: Hymnen der Welt (Afghanistan bis Zimbabwe) (2006)
XX: One Man Band 2 (2009)
XXI: 3 Mikroludien (2010)
XXII: Kreislerianana (2009)
XXIII: musica viva (2011)
XXIV: Trigonometrie (2011)
XXV: Abweichung (Hommage à Beethoven) (2014)
XXVI: Nach Mompous « Cancion 6 » zu spielen (2017)
XXVII: Julieta’s Sarabande (2017)
XXVIII: allemande (2019)
XXIX: no replay (2019)
XXX: One Woman Band (2020)
* XXXI: Dual Band (2020) (2人のピアニストのための)

この連作集は、モーリッツ・エッゲルトのピアノ音楽における探求の場として、現在も進化を続けています。その多様なスタイルと、従来の枠にとらわれないアプローチは、現代ピアノ作品の中でも特に注目すべき存在と言えるでしょう。

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