ヘリオメドゥーサ

ヘリオメドゥーサ：カンブリア紀の謎めいた腕足動物

ヘリオメドゥーサは、カンブリア紀に生息していた腕足動物の一種であり、中国の澄江動物群から発見された化石によって知られています。澄江で発見されたものは Heliomedusa orienta Sun & Hou と命名されました。その独特な形態から、発見当初はクラゲの仲間であると考えられていましたが、後の研究によって腕足動物であることが判明しました。

特徴的な形態

ヘリオメドゥーサの化石は、直径約2.2cmの平らな円盤状で、赤みを帯びた色をしています。一部の化石からは、実際には両面が丸く膨らんだ二枚の殻で構成されていたことがわかっています。殻の縁からは、無数の細い毛（剛毛）が生えています。殻自体は保存状態が悪いことが多いものの、薄く、鉱物化があまり進んでいないと考えられています。

クラゲとの誤認

ヘリオメドゥーサが当初クラゲと誤認されたのは、その円形に近い形状と、放射状の模様、そして周辺部の剛毛が触手のように見えたためです。「メデューサ」という名前も、クラゲに由来しています。しかし、コンウェイ・モリスらの研究によって腕足動物であることが指摘され、触手冠などの構造も確認されたことから、現在では腕足動物であることに疑いの余地はありません。

生態に関する考察

一般的な腕足動物は、殻から伸びる肉茎を使って海底に固着しますが、ヘリオメドゥーサにはそのような肉茎が見られません。また、殻の周囲全体に剛毛が生えていることから、海底に潜り込むのではなく、海底に横たわるように生活していた可能性が指摘されています。ただし、一部の化石には腹側の殻の中央にわずかな跡が見られることから、硬い基盤に固着していた可能性も否定できません。この点については、さらなる研究が待たれます。

ヘリオメドゥーサは、カンブリア紀における腕足動物の多様性を示すとともに、初期の動物進化における適応戦略を探る上で重要な存在です。その特異な形態や生態は、カンブリア紀の生物相の複雑さを物語っており、今後の研究によってさらなる発見が期待されます。

参考文献

X.ホウほか著、鈴木寿志・伊勢戸徹訳・大野照文監訳『澄江生物群化石図譜 －カンブリア紀の爆発的進化－』朝倉書店、2008年

外部リンク

川崎悟司イラスト集 - ウェイバックマシン（2013年3月21日アーカイブ分）

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