ヘルマン・エンデ

ヘルマン・グスタフ・ルイ・エンデ

ヘルマン・グスタフ・ルイ・エンデ（Hermann Gustav Louis Ende、1829年3月4日生 - 1907年8月10日没）は、19世紀から20世紀初頭にかけて活躍したドイツ（当時のプロイセン王国）出身の建築家です。明治時代には日本政府から招かれ、「お雇い外国人」として近代化政策に貢献しました。ベルリンの建設学校で教鞭を執り、後には学長も務めるなど、教育者としても大きな影響力を持った人物です。また、ヴィルヘルム・ベックマンと共に建築設計事務所を主宰し、ネオバロック様式を代表する数々の作品を生み出しました。

経歴と教育

エンデはランツベルク・アン・デア・ヴァルテで生まれました。父親は書店を経営しており、美術を愛好する人物でした。エンデが8歳の時、一家はベルリンへ移り住み、彼はドロテーエンシュタット市立学校、次いでケルン・ギムナジウムで学びました。当初は医学を志していましたが、学費の問題や自身の製図能力を考慮し、ポツダムの測量学校へと進路を変更します。1848年にはプロイセン建築局の測量士として認定され、ポツダムで測量業務に携わりました。その後、ポツダム市建築監のユリウス・マンガーのもとで建築実務を積み、ミヒャエル教会の建設にも関わっています。

1851年、エンデはベルリンのバウアカデミー（建設学校）に入学しました。在学中の一年間は兵役に就いています。1852年には建築家協会に加入し、1855年には建築監督の資格を取得しました。特に優秀な成績を収めたため、旅行奨学金を受けて国外で学び、再びバウアカデミーで高度な教育を受けました。この時期、バウアカデミー教授であったフェルディナント・フォン・アルニムの下で設計補助を務め、実務経験を深めています。

建築家としての活動

1856年にはナウムブルク近郊のプフォルタ学院で農学校の建設に携わりました。1857年には、後に長年のパートナーとなるヴィルヘルム・ベックマンと共にイタリアを旅行し、ローマではドイツ芸術家協会の一員となっています。1858年には優秀な業績に対して国から表彰され、1859年にはバウマイスター（棟梁）試験に合格し資格を得ました。また、ベルリン美術アカデミー主催の設計競技で入選し賞金を受けています。同時期には帝国宰相官邸の改築設計にも参加しました。

1860年、エンデは商務大臣アウグスト・フォン・デア・ハイトのためにフォン・デア・ハイト邸（現ドイツ・プロイセン文化財団事務総局）を設計しました。同年、ヴィルヘルム・ベックマンと共同で建築設計事務所「エンデ・ウント・ベックマン」を設立。1864年には自身の邸宅も手がけました。

彼は教育者としてのキャリアも積み、1866年には一時的にバウアカデミーの助手を務めます。1874年にはプロイセン美術アカデミーの会員となり、1876年には評議員に就任しました。1878年にはバウアカデミーの教授となり、プロイセン技術建築局の役員も兼任。1881年にはシャルロッテンブルク工科大学建築学科の教授となり、ここでも評議員を務めています。1882年には美術アカデミーの副学長、1883年にはプロイセン技術建築局建設部門および建築アカデミー建築部長を歴任。1886年からは工科大学に加えて美術アカデミーでも教鞭を執り、同年開設されたマイスターアトリエ建築コースの教授に就任しました。1895年には美術アカデミーの学長に選ばれています。

1896年、長年続いたエンデ・ウント・ベックマン建築設計事務所を閉鎖しました。翌1897年には工科大学教授の職も退いています。1907年にこの世を去りましたが、彼の遺志により設立された基金は、現在も工科大学の学生への奨学金として役立てられています。

日本での「官庁集中計画」への参画

明治時代の日本は、近代国家体制の確立を目指し、首都東京に西洋式の大規模な官庁街を建設する「官庁集中計画」を推進していました。当時の外務大臣であった井上馨はこの計画の実現のため、1887年にエンデ・ウント・ベックマン事務所に設計監理を依頼し、契約を結びました。この計画には、エンデとベックマンに加え、ヘルマン・ムテジウス、リヒャルト・ゼール、カルロス・チーゼ、ブリーグレップ博士、そしてベルリンの都市計画家として知られるジェームス・ホープレヒトなど、総勢12名の専門家がドイツから来日しました。

まず来日したベックマンらが、日比谷・霞ヶ関周辺に議事堂や中央官庁などを集中配置する壮大な都市計画案を作成しましたが、この初期案は後に規模が縮小されました。エンデはベルリンで主要な設計図を作成し、契約の翌年である1887年に来日しました。彼は単に西洋建築の設計を行うだけでなく、奈良や京都を訪れて日本の伝統的な社寺建築も視察しました。同年中にドイツへ帰国しています。帰国後、エンデは日本の古建築の要素を取り入れた和洋折衷様式の議事堂計画案なども作成しましたが、残念ながらこれは採用されませんでした。

エンデが帰国して間もなく、井上馨が条約改正交渉の失敗により失脚したことで、官庁集中計画全体は頓挫してしまいます。既に設計が進んでいた議事堂、司法省、裁判所の3棟については設計作業が続けられましたが、結局1890年にはエンデ・ウント・ベックマン事務所との契約が解除されることになりました。最終的に、エンデ・ウント・ベックマン事務所の設計による建物の中で、旧司法省庁舎と大審院庁舎の2棟だけが実現に至りました。

日本における作品

エンデ・ウント・ベックマン事務所が設計し、日本で実現した主な建築物は以下の通りです。

旧司法省庁舎：現在も残されており、近代日本の司法を象徴する建築物として重要文化財に指定されています。
大審院庁舎：かつて存在しましたが、現在は取り壊されています。

彼が日本の近代化に果たした役割、特に官庁集中計画における貢献は、日本の建築史において重要な位置を占めています。

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