ヘンダーソン島 (ピトケアン諸島)

ヘンダーソン島：秘境の孤島、数奇な歴史と手つかずの自然

南太平洋に位置するヘンダーソン島は、ピトケアン諸島に属するイギリス領の無人島です。ピトケアン島から約190キロメートル離れたこの島は、周囲を岩礁に囲まれた面積約37平方キロメートルの平坦なサンゴ礁島で、その独特の自然と歴史から世界的な注目を集めています。

発見と命名、そして忘れられた歴史

ヘンダーソン島にはかつてポリネシア人が居住していた痕跡が残されていますが、その後の歴史は謎に包まれています。1606年、スペイン人航海士ペドロ・フェルナンデス・デ・キロスが島を発見し「サン・ファン・バティスタ」と命名しましたが、その後、島の存在は長く忘れ去られました。

1819年、イギリス東インド会社のヘラクレス号の船長ジェームズ・ヘンダーソンが島に到達し、「ヘンダーソン島」と命名。同年、別の船の船長も島に上陸し「エリザベス島」と名付けましたが、最終的にはヘンダーソンの名が定着しました。この命名をめぐる経緯は、複数の船による発見と命名、そして当時の船長同士の交流などが複雑に絡み合っています。

難破船の乗組員と謎の人骨

1820年、アメリカ捕鯨船エセックス号の難破により、乗組員の一部がヘンダーソン島に漂着しました。彼らの一部は救助されましたが、島に残った3人は数ヶ月間を島で過ごし、そこで人骨を発見したと証言しています。その後も島からは複数の人骨が発見されており、その起源をめぐっては様々な議論がなされています。ポリネシア人のものとみられる人骨に加え、難破船の乗組員のものと推測される白人の人骨も発見されており、その詳細は未だ明らかになっていません。これらの発見は、ヘンダーソン島の歴史の謎をさらに深めるものとなっています。

領有と開発計画

1902年、ピトケアン島民がヘンダーソン島のイギリス領有を宣言し、その後もイギリスによる領有が確認されています。1937年には航空測量が実施され、イギリスの旗が掲げられました。

1980年代初頭には、アメリカの実業家アーサー・M・ラトリフがヘンダーソン島の開発を計画し、別荘建設や滑走路建設などを提案しました。しかし、この計画は環境保護団体などの反対を受け、頓挫しました。この出来事は、開発と自然保護のバランスの難しさ、そしてヘンダーソン島の貴重な自然環境を守る重要性を浮き彫りにしました。

世界遺産登録と独自の生態系

ヘンダーソン島は、手つかずの自然が残る貴重な島です。10種の固有植物、4種の固有鳥類など、独自の生態系を育んでいます。しかし、外来種の侵入などによる影響も懸念されており、保全への取り組みが続けられています。これらの自然環境の価値が認められ、1988年にはユネスコの世界遺産（自然遺産）に登録されました。

固有種

ヘンダーソン島には、固有の動植物が多く生息しています。特に鳥類では、ヘンダーソンクイナ、ムネムラサキインコなどが知られています。植物では、Myrsine hosakaeやSideroxylon st-johnianumなど、固有種が多く確認されています。これらの固有種は、ヘンダーソン島独自の進化の歴史を物語る貴重な存在です。また、昆虫や軟体動物なども固有種が多く、その生物多様性は非常に高く評価されています。

世界遺産登録基準

ヘンダーソン島は、世界遺産登録基準(vii)(x)を満たすとして登録されました。(vii)は「ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域」を、(x)は「生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地」を指します。この登録は、ヘンダーソン島の自然環境の国際的な重要性を示すものです。

ヘンダーソン島は、その歴史と自然の両面において、貴重な存在です。これからも、この島の自然環境と歴史的遺産の保護が、世界中の人々によって大切に続けられていくことを願っています。

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