ヘンリー・ホブソン・リチャードソン

ヘンリー・ホブソン・リチャードソン：アメリカ・ロマネスク[[建築]]の巨匠

ヘンリー・ホブソン・リチャードソン(1838年-1886年)は、19世紀アメリカを代表する建築家の一人です。ルイジアナ州生まれ、ハーバード大学卒業後、パリのエコール・デ・ボザールで建築を学びました。南北戦争の影響で学業を中断したものの、その後、独自の建築様式を確立し、アメリカ建築史に大きな足跡を残しました。

パリ留学とロマネスク様式への傾倒

リチャードソンは、当初土木工学に興味を持っていましたが、建築学へと転向し、パリのエコール・デ・ボザールに入学します。しかし、南北戦争による経済的困難のため、学業を完遂することはできませんでした。それでも、パリでの短い期間の学習は彼に大きな影響を与え、特に南フランスのロマネスク[[建築]]に魅了されたことが、後の彼の建築スタイルに深く関わっています。エコール・デ・ボザールで学んだことは、彼にとって貴重な経験となり、その後、アメリカにおけるエコール・デ・ボザールの影響力の高まりに貢献しました。

リチャードソン・ロマネスク様式の誕生と代表作

リチャードソンは、ヨーロッパの古典様式ではなく、中世風の建築様式、特にロマネスク様式に傾倒しました。1869年、ニューヨーク州バッファローの州立精神病院の設計を依頼されたことが、彼にとって転機となります。この大規模なプロジェクトで、彼は自身の建築様式を確立し、「リチャードソン・ロマネスク」と称される独自のスタイルを生み出しました。メディナ砂岩をふんだんに使用した重厚な建物は、現在も国定歴史史跡として保存されています。

彼の代表作として最も有名なのは、ボストンのトリニティ教会です。1872年に完成したこの教会は、アメリカにおける芸術と工芸運動の先駆けとなるような内装も特徴で、彼の国内における名声を確固たるものとしました。この作品以降、彼は数多くの建築プロジェクトを手掛け、建設会社ノークロス兄弟と長期にわたる協力関係を築きました。1885年には、アメリカの建築家によって選定された優れた建物の10傑のうち、半分以上がリチャードソンの設計によるものでした。これには、トリニティ教会の他にも、オールバニ市役所、ハーバード大学のセバーホールなどが含まれていました。

多様な建築作品と建築家としての影響力

リチャードソンは教会や公共施設だけでなく、鉄道駅、図書館、裁判所など、様々な建築物を設計しました。ボストン・アンド・オールバニ鉄道の駅舎などは、彼の教会や公共建築ほど顕著なロマネスク様式ではないものの、彼の設計であることは間違いありません。彼の死後も、シェプリー・ルタン・アンド・クーリッジ社が彼の未完成の建築を引き継ぎ、リチャードソン・ロマネスク様式の建築を継続しました。

彼の作品は、ハーバード大学のセバーホールやアレゲニー郡裁判所など、様々な規模と用途の建物に見られます。これらの建築物は、重厚な石造り、半円アーチ、丸窓など、リチャードソン・ロマネスク様式の特徴をよく表しています。シカゴのマーシャルフィールド卸売倉庫は、1930年に解体されましたが、その大胆なデザインは多くの人々の記憶に残っています。

リチャードソン・ロマネスク様式とその後の影響

「リチャードソン・ロマネスク」様式は、ネオゴシック様式のようなビクトリア朝様式とは異なり、中世の重厚さとボザール様式の洗練さを融合した独特のスタイルです。その特徴は、絵画のような重量感、力強い屋根の形状、田舎風と多彩な装飾の組み合わせにあります。リチャードソン死後も、この様式は多くの建築家によって受け継がれ、公共建築物だけでなく、教会や住宅にも用いられました。

リチャードソンの影響は、シェプリー・ルタン・アンド・クーリッジ社、マッキム・ミード・アンド・ホワイト社、そしてルイス・サリヴァン、フランク・ロイド・ライトといった後世の建築家にも及んでいます。特に、サリヴァンはシカゴの公会堂ビルで、リチャードソンの石壁の質感や重量感を積極的に取り入れました。

リチャードソン・ロマネスク様式のレプリカ

現在でも多くのロマネスク様式の建物が建てられていますが、中にはリチャードソンのデザインと誤解されるほど、その様式を踏襲したものや、特定の作品を模倣したものもあります。ウェルズリーファームズ鉄道駅や、ニューヨーク州オーチャードパークの鉄道駅などがその例として挙げられます。これらの建物は、リチャードソン建築の普及と影響力の大きさを示す証といえるでしょう。

ヘンリー・ホブソン・リチャードソンは、わずか47歳で亡くなりましたが、彼の残した建築作品と独自の様式は、現代においても高く評価されており、アメリカの建築史に不可欠な存在となっています。

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