ボザール様式

ボザール様式について

ボザール様式は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて発展した、フランスのエコール・デ・ボザールに端を発する建築様式です。このスタイルは、アメリカ合衆国の建築にも強く影響を及ぼしました。アメリカの建築家たちは、フランス古典主義の要素を取り入れ、自国の独自の文化やニーズに応じた建物を設計しました。

ボザール様式は、マンサード屋根やペディメント、スワンネック、柱のオーダーなどの古典的な装飾が特徴的で、特にアメリカの建築においては「アメリカンボザール」、または「アメリカンルネッサンス」とも呼ばれてきました。このスタイルは19世紀末の世界恐慌まで続き、多くの著名な建築物を生み出しています。

アメリカにおけるボザール様式の代表的な建築家には、チャールズ・F・マッキム、ウィリアム・R・ミード、スタンフォード・ホワイトがいます。彼らは「マッキム、ミードアンドホワイト」と呼ばれる建築設計事務所を共同で運営し、当時の代名詞的な設計事務所として多くのプロジェクトを手掛けました。彼らの作り出す建物は、しばしばフランスの古典主義的要素が大きく取り入れられ、かつ規模も一層大きくなっていました。昔ながらのアカデミックな正確性は無視されることが多く、装飾的な要素はダイナミックで、場合によっては非常に大胆な印象を与えています。

例えば、マッキム、ミードアンドホワイトによって設計されたボストン公立図書館やニューヨーク公共図書館、アメリカ自然史博物館などは、その優雅さと規模の大きさで知られています。日本においても、このボザール様式の影響が見受けられ、横河民輔設計の三井本館や旧帝国劇場、大阪図書館など、多くの西洋風建築がこのスタイルを取り入れています。これらの日本の作品は、アメリカの建物と比較すると、細部の装飾や設計が精巧であることが特徴的です。

ランドスケープデザインへの影響

また、ボザール様式は建築だけでなく、ランドスケープデザインにも影響を及ぼしました。ヘンリー・ハバードとテオドラ・キンブルによる「ランドスケープデザインの研究序論」という理論書には、ボザールスタイルの特徴的な庭園デザインが詳述されています。この理論は、1940年代までアメリカでの専門的な教育プログラムに大きな影響を与え、ボザール様式の庭園が数多く作られました。

この書籍では、住宅地に対するシンプルでありながら美しい配置の重要性が強調されています。主な要素としては、邸宅、エントリーコート、庭、テラス、進入路などが正確に配置され、軸線を作り出すことによって空間の美を際立たせています。また、視覚的に楽しさを与えるため、平面デザインにおいては視線が導かれる工夫がなされています。

ハバードとキンブルの理論は、庭園デザインにおいても秩序が求められる一方で、自然との調和が重要であることを説いています。それは、庭が個々の要素（植物、石、装飾品など）のバランスを持ち、風景を構成することによって達成されます。

このようにボザール様式は、アメリカの建築やランドスケープデザインに多大な影響を与えており、今もなおそのスタイルは多くの現代建築に息づいています。美術やデザインにおける美的要素を取り入れ、和の文化とも調和した形式が、時代を越えて私たちに感動を与えています。ボザール様式は、ただの建築スタイル以上に、歴史と文化の交差点であり続けているのです。

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