ベアトリス・デ・ポルトゥガル (カスティーリャ王妃)

ベアトリス・デ・ポルトゥガル：激動の時代を生きた女王

ベアトリス・デ・ポルトゥガル（1373年 - 1420年頃）は、カスティーリャ王フアン1世の王妃であり、短期間ながらポルトガル女王の座についた人物です。彼女の生涯は、当時のポルトガルとカスティーリャの複雑な政治状況に翻弄されたものでした。

生い立ちと王位継承

ベアトリスは、ポルトガル王フェルナンド1世と王妃レオノール・テレスの長女としてコインブラで生まれました。弟たちが夭逝したため、フェルナンド1世の後継者に指名されます。しかし、母レオノール・テレスの不品行な噂から、ベアトリスの出自を疑う声も上がっていました。

カスティーリャとの結婚と王位簒奪

1383年、フェルナンド1世が重体に陥ると、母レオノールは摂政として実権を握り、カスティーリャ王フアン1世にベアトリスとの結婚とポルトガル王位の譲渡を持ちかけます。レオノールは、愛人であるアンデイロ伯爵と結託して国政を牛耳っており、カスティーリャ王を取り込むことで自身の権力基盤を強化しようとしました。フアン1世もこの提案に乗り気で、同年5月17日にベアトリスと結婚しました。

同年10月にフェルナンド1世が崩御すると、レオノールはフアン1世とベアトリスの摂政となります。しかし、ポルトガル国民と貴族は、外国人に実権を売り渡すような事態に激怒し、フェルナンド1世の庶弟であるアヴィス騎士団長のジョアンが反乱を起こします。

王位を巡る争いと敗北

1384年、フアン1世はベアトリスとの間に生まれたミゲル王子こそが正当な王位継承者であると主張し、ポルトガルに侵攻します。しかし、1385年のアルジュバロータの戦いでカスティーリャ軍は大敗を喫し、2年余りにわたる戦争は終結しました。ジョアンがアヴィス王朝の初代国王として即位し、ベアトリスはジョアンを王として認め、自らは退位しました。

その後

ベアトリスはミゲル以外に子供をもうけることはなく、1408年にマドリガルで亡くなり、トーロに埋葬されました。

1383年から1385年はポルトガル空位時代として知られていますが、ベアトリスが短期間でもポルトガル女王を称したことから、ポルトガル君主の一覧に名前が加えられることもあります。

ベアトリス・デ・ポルトゥガルは、ポルトガルとカスティーリャの間の政治的駆け引きに巻き込まれ、短命に終わった女王でした。彼女の生涯は、当時のヨーロッパの政治情勢を反映する出来事として、歴史に刻まれています。

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