アヴィス王朝

アヴィス王朝：大航海時代のポルトガルを彩った王家

アヴィス王朝（Dinastia de Avis）は、1385年から1580年までポルトガル王国を支配した王家です。ブルゴーニュ王朝の後を継ぎ、ジョアン1世からエンリケ1世まで、約200年間ポルトガルを統治しました。この時代は、ポルトガルの「大航海時代」と重なり、ヨーロッパの歴史において重要な役割を果たしました。

アヴィス王朝の成立

14世紀、ポルトガルは黒死病の流行やカスティーリャ王国との戦争によって社会が疲弊していました。フェルナンド1世の死後、王位継承問題が発生し、カスティーリャによる併合の危機に瀕します。こうした状況下、1385年にジョアン1世が即位し、アヴィス王朝が成立しました。ジョアン1世は、アルジュバロータの戦いでカスティーリャ軍を破り、ポルトガルの独立を守り抜きました。

大航海時代の幕開け

アヴィス王朝は、西アフリカ探検を積極的に推進し、エンリケ航海王子の主導のもと、アフリカ大陸への進出を開始しました。1415年にはセウタを攻略し、ヨーロッパ諸国に先駆けて海外進出を果たします。ヴァスコ・ダ・ガマはインド航路を開拓し、大西洋とインド洋を結ぶ「ポルトガル海上帝国」を築き上げました。ポルトガルは、香辛料貿易を独占し、莫大な富を得ました。

カスティーリャ王位継承への介入

1474年、カスティーリャ王エンリケ4世が崩御すると、アフォンソ5世はカスティーリャ王位継承に介入しました。姪であるフアナ王女との結婚を条件に王位継承を提案し、カスティーリャ国内は両派に分かれて争いました。1479年、アルカソヴァス条約が締結され、ポルトガルは西アフリカ沿岸部の領有権を獲得しました。

ポルトガル海上帝国の確立

ジョアン2世は、有力貴族の特権を抑制し、王権の強化を図りました。西アフリカ探検を推進し、1482年にはディオゴ・カン、バルトロメウ・ディアスらを西アフリカ沿岸に派遣し、インド航路の開拓を命じました。トルデシリャス条約によって、ポルトガルはブラジルを含む広大な地域を領有し、ポルトガル海上帝国を確立しました。マヌエル1世の時代には、ヴァスコ・ダ・ガマのインド航路開拓やブラジルの発見など、ポルトガルの海外進出は最盛期を迎えました。

王朝の衰退とイベリア連合

香辛料貿易の衰退とともにポルトガルの国力は低下し、王位継承問題が発生しました。1578年、セバスティアン1世がアルカセル・キビールの戦いで戦死すると、後継者問題が深刻化しました。1580年、スペイン王フェリペ2世がポルトガル王位を兼ね、アヴィス王朝は滅亡しました。ポルトガルはスペインに併合され、イベリア連合が成立しました。

ポルトガルの再分離

17世紀前半、ポルトガルではスペインからの独立を望む声が高まりました。1640年、ポルトガルの貴族は反乱を起こし、ジョアン4世を擁立してブラガンサ王朝を創始しました。ポルトガルはスペインから独立を回復し、再び独立国家としての道を歩み始めました。

王権の強化と社会の変化

アヴィス王朝の歴代国王は、王権の強化を図り、様々な政策を打ち出しました。ジョアン1世は、商人からの援助を取り付け、政治的・経済的に重要な要職にブルジョアジーや小貴族を抜擢しました。マヌエル1世は、新たな法典を発布し、中央集権化を推進しました。また、海外貿易の展開とともに、リスボンはイベリア半島最大の都市に成長し、社会構造も大きく変化しました。

アヴィス王朝は、ポルトガルの歴史において、最も輝かしい時代を築き上げました。大航海時代を牽引し、世界中にその名を轟かせたアヴィス王朝の遺産は、今もなおポルトガルに息づいています。

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