ベアナックル・ボクシング

ベアナックル・ボクシング：素手で闘う格闘技の歴史と現代

ベアナックル・ボクシングは、グローブなどの保護具を一切着用せず、文字通り素手で拳を交える格闘技です。その起源は古く、ボクシングの原型とも言われています。ストリートファイトとは異なり、相手がダウンした際には攻撃を禁止するなどのルールが存在し、18世紀から19世紀にかけては、ロンドン・プライズ・リング・ルールによってその多くが規定されていました。

歴史

ボクシングの歴史書『ピューギリスティカ』によれば、1681年にはイングランドで最初のプライズファイティング（賞金付き試合）の記録が残っています。また、1719年にはジェームズ・フィグがイングランド初のベアナックル・チャンピオンとなり、1730年に引退するまでそのタイトルを保持し続けました。彼は「ピューギリスティック・ファウンデーション（拳闘協会）」を設立し、拳、剣、六尺棒の用法をボクサーに指導。「崇高なるディフェンス技術の専門家」を自称しました。

その後、フィグの教え子であるジャック・ブロートンがロンドン・プライズ・リング・ルールを整備し、近代ボクシングの基礎を築きました。この時代には、ジャック・ブロートン、エリザベス・ウィルキンソン、ダニエル・メンドーサ、ジェム・ベルチャー、トム・クリッブなど、数多くの著名なチャンピオンが誕生しました。

ベアナックルによる試合の最長記録は、1855年12月3日にオーストラリアのヴィクトリア州で行われたジェームズ・ケリーとジョナサン・スミスの試合で、17ラウンド、6時間15分にも及びました。

アメリカでは、2018年3月20日にワイオミング州が初めて合法化するまで、プロのベアナックル・ボクシングは連邦法および州法で違法とされていました。しかし、それ以前にもタブロイド紙『ナショナル・ポリス・ガゼット』が試合を主催し、チャンピオンベルトを発行するなど、非合法ながらもその火を絶やさずにいました。

1889年7月8日に行われたジョン・L・サリバン対ジェイク・キルレイン戦は、最後のメジャーなベアナックルヘビー級世界選手権とされています。

技術

初期のベアナックル・ボクシングには明確なルールが存在せず、体重による階級分けやラウンド制限、レフェリーなども存在しない混沌としたものでした。しかし、時代とともにルールが整備され、近代ボクシングへと近づいていきました。ブロートンの時代には、グラップリングや投げ技、首を極めるクリンチなども認められていました。

また、この時代には多くの革新的な技術が開発されました。サミュエル・エリアスはアッパーカットを、トム・スプリングは左フックを広め、ハーレクイン・ステップと呼ばれるフェイント技術を生み出しました。ダニエル・メンドーサは、アウトボクサー・スタイルを考案したことで知られています。

アイリッシュ・スタンド・ダウン

「アイリッシュ・スタンド・ダウン」は、リングを動き回る要素を排除し、パンチとそれを受けることに特化した、伝統的なベアナックル・ファイティングの一種です。19世紀後半に米国のアイルランド系地区で人気を博しましたが、次第にベアナックル・ボクシングや通常のボクシングに取って代わられました。

現代のベアナックル・ボクシング

近年、ベアナックル・ボクシングは新たな盛り上がりを見せています。英国にはベア・ナックル・ボクシング（BKB™）というプロモーションが、米国にはベア・ナックル・ファイティング・チャンピオンシップ（BKFC）という団体が存在し、世界中で試合が開催されています。

現代の試合は、グローブ式のボクシングとは異なり、ノックダウンのカウントが18秒であることや、試合が3x2ラウンド（タイトル戦は5x2あるいは7x2ラウンド）で構成されるなど、独自のルールが採用されています。

ベアナックル・ボクシングは、その過激さから賛否両論ありますが、その歴史と伝統は、ボクシングのルーツを辿る上で重要な要素と言えるでしょう。

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