ベイカー・ボウル

ベイカー・ボウル：フィラデルフィアの歴史を刻んだスタジアム

ベイカー・ボウルは、アメリカ合衆国ペンシルベニア州フィラデルフィアにかつて存在した多目的スタジアムです。MLBのフィラデルフィア・フィリーズが1887年から1938年まで、NFLのフィラデルフィア・イーグルスが1933年から1935年まで本拠地として使用していました。特に、1933年にイーグルスが本拠地としたことで、史上初の野球とアメリカンフットボールの兼用スタジアムとなりました。

誕生から火災、そして再建

1887年、フィラデルフィア北部に位置する場所に、レクリエーション・パークに代わるフィリーズの本拠地として開場しました。当初は「ナショナル・リーグ・パーク」という名称でしたが、「フィラデルフィア・ベースボール・グラウンズ」や「ハンティングドン・ストリート・グラウンズ」といった通称も存在しました。「ベイカー・ボウル」という名称になったのは、1913年にウィリアム・ベイカーがフィリーズのオーナーに就任してからのことです。

開場当初のスタンドは木製でしたが、1894年8月6日に火災で全焼してしまいます。しかし、迅速な対応で8月18日までに仮設スタンドを建設し、その年のシーズンを乗り切りました。オフシーズンには大規模な改修工事が行われ、コンクリート製の2層構造の新スタンドが建設され、1895年5月2日に再開場しました。

度重なる事故と老朽化

再建されたベイカー・ボウルでしたが、1903年8月8日には外野席が崩落し、12名が死亡、232名が負傷するという大惨事が発生しました。構造的な問題に加え、フィリーズの成績不振も重なり、観客動員は伸び悩みました。老朽化も進み、1938年のシーズン途中に、フィリーズは近くにあったアスレチックスの本拠地、シャイブ・パークへ移転することになりました。閉場当時、ベイカー・ボウルはMLB最古の球場でした。

閉場後の活用と、その終焉

閉場後、ベイカー・ボウルはミジェットカーレース場やアイススケートリンクとして利用されましたが、最終的には1950年に完全に解体されました。現在、跡地には記念碑が建てられています。

忘れてはならない事故の記録

ベイカー・ボウルでは、1903年と1927年に大きな事故が発生しています。

1903年8月8日：球場沿いの15番通りで騒ぎが発生し、多くの観客が木製の左翼スタンドに詰めかけた結果、スタンドが崩落。12名が死亡、232名が負傷しました。
1927年5月14日：右翼ファウルライン沿いの客席が、雨宿りのために集まった観客の重みと支柱の腐食により崩落。観客が逃げ惑う中で圧死者も出て、1名が心臓麻痺で死亡、50名が負傷しました。

ベイカー・ボウルの主要な出来事

1887年4月30日：開場
1895年5月2日：改修後初の公式戦
1914年6月9日：ホーナス・ワグナーが通算3000本安打を達成
1915年10月：ワールドシリーズ開催（レッドソックスがフィリーズを破り世界一）
第2戦にはウッドロウ・ウィルソン大統領が観戦（史上初の大統領によるワールドシリーズ観戦）
1923年：ルーベン・バーマン少年がホームランボールの返還を拒否し、所有権がファンにあることが認められる
1924年10月3日：ニグロリーグによる初のカラード・ワールドシリーズ開催
1935年5月30日：ベーブ・ルースが現役最後の試合に出場
* 1938年6月30日：最後のMLB公式戦（ジャイアンツ対フィリーズ）

ベイカー・ボウルは、数々のドラマと歴史的な出来事の舞台となりました。その存在は、今もなお多くの人々の記憶に刻まれています。

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